抄録 |
膵癌で根治可能な治療は手術だが,切除単独での限界も明らかである.非手術療法での長期生存は困難だが,近年の化学療法の進歩に伴い,集学的治療で成績向上の可能性がある.【目的】切除企図膵癌に対する術前GS療法(NAC-GS)の有効性を検証し,標準治療として確立する.【方法】1.日本肝胆膵外科学会プロジェクト研究(膵03)で17施設の切除企図膵癌を解析.2.切除可能・切除境界膵癌に対し,多施設共同でNAC-GSの第II相試験(UMIN-1504)を行い,2008~10年に登録された35例の適格例を解析.3.NAC-GSの至適投与期間を明らかにするためGS療法を3コースとした第II相試験(NAC-GS3:UMIN-3402)を計画.4.NAC-GSの標準治療に対する優越性を検証するため,NAC-GS+手術+S1術後補助療法と手術先行+S1術後補助療法の比較試験,切除可能膵癌に対するランダム化II/III相試験(Prep-02/JSAP-05:UMIN-9634)を計画.【結果】1.2007-09年の膵癌971例(術前治療388例)の解析で,膵癌術前治療は周術期成績を低下させることなく安全に実施可能で,R0切除率を高めリンパ節転移率を低下させる可能性が示唆された(Motoi F, et al. JHPBS, 2013).2.2008~10年に登録された35例の適格例の解析で,画像上の腫瘍縮小69%,腫瘍マーカー減少89%で,87%にR0切除が可能であり,ITT解析による2年生存率45.7%であった(Motoi F, et al. Ann Surg Oncol, 2013).3.2010~12年に41例の切除可能・切除境界膵癌を集積した.4.全国70施設の多施設共同として2012年11月にプロトコールを確定,IRBの承認を得て13年1月より登録を開始,9月現在91例の症例を集積している.【結論】NAC-GSは多施設共同で安全に施行可能で,多くの症例で一定の治療効果が期待できる.III相試験で膵癌治療戦略の重要なエビデンスが得られることが期待される. |