セッション情報 シンポジウム10

膵癌化学療法の進歩

タイトル S10-5:

進行膵癌に対する化学療法の治療成績は改善したか?~GEM・S-1時代を超えて~

演者 中井 陽介(東京大学消化器内科)
共同演者 伊佐山 浩通(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科)
抄録 【背景】我々はこれまで,S-1による進行膵癌の予後改善を報告した(Pancreas 2010, JJCO 2010).その後もoxaliplatin/CPT-11/paclitaxelによる2次治療以降,gemcitabine(GEM)・candesartan(GECA)の1次治療など,予後改善を目指して臨床試験を行っており,その結果について05年S-1導入後から現在まで,年代別に再検討した.GEM1剤であったS-1導入前(preS-1群),1次治療GEM+S-1(GS),2次治療S-1の臨床試験を開始したS-1導入後初期(postS-1前期群),GEM/S-1以外の薬剤の臨床試験を行ったS-1導入後後期(postS-1後期群)の3群の成績を比較.【対象】01年以降に化学療法を導入した進行膵癌352例(preS-1 54例,postS-1前期139例,postS-1後期159例)を対象に患者背景,治療成績について検討.【結果】1次治療は,preS-1群は54例全例GEM,postS-1前期群はGEM97例,GS42例,postS-1後期群はGEM58例,GS25例,S-1 7例,GEM+erlotinib12例,GECA28例,GS+leucovorin(GSL)26例,FORFIRINOX3例.3群間に患者背景に違いを認めなかったが,遠隔転移例はpreS-1群51.9%,postS-1前期群63.3%,postS-1後期群69.2%と増加傾向を認めた(p=0.072).preS-1群,postS-1前期群,postS-1後期群のRRは1.9%→10.1%→7.6%(p=0.149),Disease control rateは25.9%→68.3%→71.7%(p<0.001),PFSは4.4→5.6→5.5ヵ月(p=0.008),OSは9.5→11.8→13.6ヵ月とS-1導入前後では既報のように治療成績の改善を認めたが,S-1導入後の前・後期では顕著な改善は認められなかった.S-1導入後の前・後期におけるstage別検討では,局所進行例ではPFS8.7→14.4(p=0.028),OS15.8→20.9ヵ月(p=0.083)と改善傾向を認めたが,遠隔転移例ではPFS4.4→4.0ヵ月(p=0.729),OS9.5→8.7ヵ月(p=0.409)と改善を認めなかった.【結語】S-1導入前後ではPFS・OSともに改善を認めたが,S-1導入以降の2次治療以降の開発は局所進行例でのみ治療成績を改善し,遠隔転移例では改善が乏しく,FORFIRINOXなど強力な1次治療の導入が必要と考えられた.
索引用語