セッション情報 シンポジウム10

膵癌化学療法の進歩

タイトル S10-6:

膵癌患者に対するABI-007(nab-paclitaxel)の臨床開発:日本人におけるABI-007+Gemcitabine療法第I/II相試験

演者 上野 秀樹(国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科)
共同演者 池田 公史(国立がん研究センター東病院肝胆膵内科), 古瀬 純司(杏林大学医学部内科学腫瘍内科)
抄録 【目的】ABI-007(nab-paclitaxel,アブラキサン?)の膵癌領域における臨床開発として,米国においてABI-007+Gemcitabine(GEM)療法の第I/II相試験が実施され,良好な治療成績が示唆された.続いて海外11ヶ国にて第III相試験(MPACT試験)が実施され,GEM単独群に比べABI-007+GEM併用群で全生存期間(OS)の有意な延長が報告された(OS中央値,8.5ヶ月vs. 6.7ヶ月;HR,0.72).本結果から,米国において2013年9月に膵癌に対する適応が承認されている.本邦においても,日本人における有効性と安全性を確認するため,MPACT試験と同じレジメンを用いた第I/II相試験を計画した.【方法】主な選択基準は,病理学的に腺癌が確認された転移性の浸潤性膵管癌,ECOG Performance Status(PS)0~1,原発巣以外に測定可能病変を有する未治療切除不能・再発膵癌患者である.投与方法はABI-007(125mg/m2)を30分で点滴静注後,GEM(1000mg/m2)を30分で点滴静注とした.これを週1回,3週連続投与後1週間休薬による4週を1サイクルとして,病勢増悪等の中止基準に該当するまで繰り返し投与した.初期忍容性の確認は,予め定義した有害事象の1サイクル中での発現により評価した.【結果】登録された7例の患者背景は,年齢中央値:63歳(44-68歳),性別:男性4例/女性3例,PS:0:2例/1:5例,原発部位:膵頭部3例/膵体部1例/膵体尾部1例/膵尾部2例で,主な転移部位は肝:7例,腹部リンパ節:3例,肺:2例,腹水:2例であった.本療法の初期忍容性は全例で確認され,抗腫瘍効果は部分奏効3例,安定4例であった.【結論】ABI-007+GEM併用療法は日本人においても初期の忍容性が確認され,現在,全奏効率を主要評価項目とした第II相試験部分の登録が終了している(合計34例).本シンポジウムにおいて初期忍容性を確認する第I相試験部分を中心に,34例の治療継続性についても報告する.
索引用語