セッション情報 パネルディスカッション1

消化管癌テーラーメード化学療法の進歩

タイトル PD1-1[基]:

消化管がん薬物療法の個別化治療を目指した取り組み

演者 大津 敦(国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
共同演者
抄録 次世代シーケンサーなどのゲノム解析技術と創薬技術の進歩により,がん薬物療法の個別化は急速に進歩しつつある.最も進歩している肺がんでは多数のドライバー遺伝子異常とその阻害剤により大きくその臨床像が変貌しつつある.消化管がんにおいては,ドライバー遺伝子異常の報告は極めて少数のみであるが,胃がんでのHER2発現とその阻害剤や大腸がんでの抗EGFR抗体に対するKRASなど一部のバイオマーカーによる個別化が標準化しつつあり,様々なアプローチでの個別化治療が試みられている.
当センターにおいては,個別化治療を目指した様々な取り組みを実施している.胃がんにおいては,HER2,EGFR,c-Met,FGFR2などの細胞膜増殖因子受容体過剰発現別の新薬開発試験が多数展開されているが,すでに1,000例の組織マイクロアレー解析をもとにその診断の標準化を行い,各種国際共同治験での病理診断の中心的役割を担っている.さらに,120例での次世代シーケンサーによるゲノム解析を実施.各種遺伝子変異・増幅と免疫染色での蛋白過剰発現との相関を解析し,胃がんでの個別化治療を目指した基本データ構築を行っている.胃がん手術標本を用いたhuman xenograftと初代培養株作成とそのゲノム解析を行うcancer encyclopediaの構築も開始し,胃がんを対象とした創薬への基盤整備も進めている.一方,大腸がんにおいては,抗EGFR抗体のall RAS,BRAFなどの新しいスクリーニングパネルを開発し,現在体外診断薬としての承認申請中であり,さらに新しい感受性候補遺伝子も探索中である.BRAF遺伝子異常に対しては,すでにBRAF阻害剤+MEK阻害剤+抗EGFR抗体の併用による開発治験も開始した.さらに,Oncotype Dxでの補助化学療法の層別化を目指して日本人でのデータを解析中である.
本講演では,胃・大腸がんを中心に,個別化治療を目指した新しい開発研究の先端的取り組みについて概説する.
索引用語