セッション情報 パネルディスカッション1

消化管癌テーラーメード化学療法の進歩

タイトル PD1-4:

胃癌におけるHER2陽性判定の現状とtrastuzumab併用化学療法症例の検討

演者 楠本 哲也(国立病院機構九州医療センターがん臨床研究部・消化器センター外科)
共同演者 沖 英次(九州大学消化器・総合外科), 坂口 善久(国立病院機構九州医療センターがん臨床研究部・消化器センター外科)
抄録 【背景】胃癌におけるHER2発現に関しては,日本人における陽性率,判定法による陽性率の違いなどまだ不明確な点も多い.HER2蛋白過剰発現を示す切除不能進行・再発胃癌に対するtrastuzumabの適用に際して,正確なHER2陽性判定とその結果に基づく治療戦略が重要である.【目的】胃癌におけるHER2陽性判定の正確性の検討と実地臨床におけるtrastuzumab併用化学療法の有用性を検討する.【対象と方法】1)2003年~2007年に当科で切除された胃癌198症例を対象としてIHC(HER2蛋白発現)とFISH(HER2遺伝子増幅)の相関を検討した.具体的には,抗体の種類(HER2/neu,4B5)と染色法(用手染色,自動染色)の条件が異なるHER2蛋白発現scoreを求め,その結果陽性率が高かった用手法でscore 2+以上かつFISH評価可能であった39例について各条件下のIHCとFISHの結果の相関を検討した.2)2011年9月以降にHER2発現結果に基づいてtrastuzumab併用化学療法が施行された進行・再発胃癌9例を解析した.【結果】1)抗体の種類や手技によってHER2陽性率は異なったが,用手染色の陽性率が高く,FISHの結果も併せた陽性率はどの条件下でも10-12/198で5.1-6.1%と近似した.その中でIHC 2+はFISHとの相関が低く,一方3+とscore 0はFISHとよく相関していた.2)この期間にtrastuzumab併用化学療法が導入されたHER2過剰発現を示す進行・再発胃癌は9例で,そのうち4例でPRが得られた(ORR44%,1次治療に限れば4/7例58%;同時期のHER2陰性例に対するS-1+CDDP療法のORR38%).【考察】HER2判定は種々の条件下で異なり,IHCでHER2過剰発現があればscore 1+であってもFISHを考慮すべきと考えられた.当院におけるHER2陽性胃癌に対する1次治療のORRの結果からHER2判定および陽性症例に対するtrastuzumabの積極的な適応が重要である.
索引用語