セッション情報 ワークショップ16(消化器病学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する緩和医療

タイトル 消W16-11:

癌性腹水を伴う胃癌腹膜播種に対するCART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)の臨床的意義

演者 北山 丈二(東京大・腫瘍外科)
共同演者 石神 浩徳(東京大・腫瘍外科), 花房 規男(東京大附属病院・血液浄化療法部)
抄録 【目的】胃癌腹膜播種に対しS-1+Paclitaxel腹腔内投与を行い良好な成績を報告してきた。今回,多量の癌性腹水を伴う症例に対してCARTを施行、その臨床的意義を検討した。【対象】2010年4月~2011年7月までP1胃癌に対し腹腔内化学療法を開始した症例のうち,癌性腹水に対してCARTを施行した23例。【方法】腹腔穿刺により1~2L/hrの速度で腹水を採取,Pore size 0.3μm filterの一次膜にて細胞成分を除去、次に0.065μm filterを用いた濃縮用二次膜にて過剰水を除去し,ろ過濃縮処理を行った。濃縮後腹水を末梢静脈より100~150mL/hrの速度で点滴静注した。【結果】患者の年齢52.9±11.9歳。男性:12例,女性:11例。PS 0:9例, 1:10例, 2:3例, 3:1例。旧規約P2:3例, P3:20例。腹水量++:7例, +++:16例。CY0:1例,CY1:22例。23例に対し合計97回のCARTを施行した(中央値2回, 1~17回)。原腹水:2390±936 (750~4300)mL, 原腹水蛋白濃度:4.44±1.04 (2.5~6.0) g/dL, 濃縮後容量:425±193 (100~800)mL , 濃縮比:0.18±0.07 (0.06~0.38), 濃縮後蛋白濃度:16.3±3.78 (11.6~23.2)g/dLであった。全例で再静注自体による血圧・脈拍などの循環動態の変化は見られなかった。また、CARTの前後で、血漿albumin値は平均で0.2g/dL上昇し、一日尿量は約2倍に増加した。腹部膨満感または呼吸苦を有する症例では、全例で症状は消失した。体重は平均2.3kg減少し、多くの症例で食事摂取量の増加も認められ、特にPS2以上の症例で、PSに著明に改善した。約半数のケースで再静注前後の体温上昇を認めたが、38℃を超える場合は5回のみで、多くは2℃未満の体温上昇に留まっていた。CART後に腹腔内化学療法を併用し、初回からの生存期間中央値は239日(58~629日)であった。【結論】CARTは多量の癌性腹水を伴う胃癌腹膜播種に対する緩和療法として安全かつ有効であり、適切な腹腔内化学療法と組み合わせることにより生存期間にも影響を与える可能性もある極めて有用な治療法であると考えられた。
索引用語 癌性腹水, CART