セッション情報 |
パネルディスカッション1
消化管癌テーラーメード化学療法の進歩
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タイトル |
PD1-9:大腸癌における抗EGFR抗体薬のテーラーメード治療を目指したmicroRNAの解析
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演者 |
三橋 慧(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座) |
共同演者 |
五十嵐 央祥(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座), 篠村 恭久(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座) |
抄録 |
【目的】近年,抗EGFR抗体薬がKRAS遺伝子(codon 12,13)野生型大腸癌の治療に用いられているが,KRAS codon 61,146やBRAF,PIK3CA,NRAS遺伝子の変異が耐性に関与すると報告されている.またmicroRNA(miRNA)の発現異常は多くの癌で注目されているが,大腸癌のEGFR下流のシグナル伝達に関わるmiRNAはほとんど解明されていない.よって我々は約800例の大腸癌症例を用いてEGFR下流の遺伝子変異陽性例で特異的に発現するmiRNAを同定し,抗EGFR抗体薬との関連を検討した.【方法】当院と関連施設にて切除された大腸癌症例を対象とし,KRAS,BRAF,PIK3CA,NRAS変異を解析.またアレイシステムでmiRNAを網羅的に解析し,各遺伝子変異と相関を示すmiRNAを検討.同定されたmiRNAは790例の大腸癌を用いて定量RT-PCRにより発現を検証した.さらに抗EGFR抗体薬治療を受けた80例の転移性大腸癌症例について遺伝子異常と予後との関連を解析した.【結果】アレイの結果からBRAF変異と相関を示すmicroRNA-31(miR-31)が同定された.定量RT-PCRで解析したところ,miR-31の高発現群はBRAF変異,右側結腸と有意な相関を示した.また抗EGFR抗体投与例においてEGFR下流の遺伝子変異はKRAS codon 61,146(6.3%),BRAF(6.3%),PIK3CA(6.3%),NRAS(5%)に認められ,これらの遺伝子変異が一つでもある症例は全て野生型の症例と比較してPFSが不良であったがOSに有意差は認めなかった.一方miR-31の高発現群は低発現群に比較してPFS,OSともに不良であった.【考察】miR-31はBRAF変異と有意に相関しており,EGFR下流のシグナル伝達に関与する可能性が示唆された.また抗EGFR抗体薬投与例では今回解析したEGFR下流の4つの遺伝子が一つでも変異している群は有意に予後が悪いことが確認されたが,miR-31は単独でもそれとほぼ同等の予後との相関を示した.このことからmiR-31は大腸癌の個別化治療にむけた有望なバイオマーカーとして今後期待される. |
索引用語 |
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