セッション情報 パネルディスカッション1

消化管癌テーラーメード化学療法の進歩

タイトル PD1-11:

癌化学療法における消化管毒性の予防的支持療法の探索的検討

演者 並川 努(高知大学外科1)
共同演者 小林 道也(高知大学医療管理学), 花崎 和弘(高知大学外科1)
抄録 【目的】癌化学療法時における腸粘膜委縮の評価法として期待されているDiamine oxidase(DAO)のバイオマーカーとしての可能性と,水溶性食物繊維(Soluble Dietary Fiber:SDF)とH2受容体拮抗薬による消化管毒性予防効果について検討することを目的とした.【対象と方法】胃癌に対してS-1投与による抗癌剤治療を行った20例に対して,DAO活性測定とEORTC QLQ C-30およびを用いたQOL評価を行い,次にS-1単独投与群(S群)12例とS-1+Lafutidine投与群(SL群)10例に振り分けし,消化器症状,GSRSを用いたQOL評価を行った.また基礎研究としてラットを用いて5FU単独投与群と5FU+SDF群に分けてDAO活性,小腸絨毛の形態を観察した.【結果】S-1投与4週後のDAO活性は投与前に比し有意に低下していた(6.6 U/l vs. 7.5 U/l;P=0.038).6例でCTCAE grade 1-2の口内炎,食欲不振,嘔気,下痢などの消化管毒性を認め,消化管毒性を有した群のS-1投与前を基準とした2,6週後のDAO活性の相対値は,消化管毒性を有さなかった群に比し有意に低かった(67% vs. 107%,P=0.021;55% vs. 97%,P=0.047).DAO活性は包括的健康指標であるglobal health statusと正の相関を,食欲不振と負の相関を示した(r=0.246,P=0.040;r=-0.351,P=0.003).SL群はS群に比して下痢(10% vs. 83%;P=0.002)が有意に少なく,SL群はS群に比してS-1の減量もしくは休薬を要した症例の割合が有意に少なかった(30% vs. 83%;P=0.027).口内炎,食欲不振,悪心,嘔吐はSL群が少ない傾向を認め,S群に比してSL群は酸逆流,腹痛が低い傾向であった.ラットにおいて5FU+SDF群は5FU群に比して血清DAO活性は有意に高く,小腸絨毛形態の障害度が低い傾向にあった.【結語】胃癌に対する抗癌剤投与による化学療法に際して,血清DAO活性を指標とした水溶性食物繊維,H2受容体拮抗薬による消化管毒性予防効果の可能性が示唆された.
索引用語