セッション情報 パネルディスカッション1

消化管癌テーラーメード化学療法の進歩

タイトル PD1-12:

患者末梢血を用いた遺伝子多型解析による5-FU有害事象の発現予測―消化管癌テーラーメイド化学療法へ向けて―

演者 大沼 忍(東北大学生体調節外科)
共同演者 戸嶋 政秀(東北大学生体調節外科), 海野 倫明(東北大学消化器外科)
抄録 【背景】5-FUは,胃癌,大腸癌等,消化管癌化学療法で頻用される抗癌剤である.一方,5-FUは時に重篤な有害事象発現の原因となり,治療の延期,中止だけでなく患者生命が危険に晒されることもある.しかし,5-FU投与前に有害事象発現を正確に予測することは困難である.近年,有害事象発現の一因として,5-FU代謝酵素の活性低下をもたらす遺伝子多型が注目されている.【目的】5-FUによる有害事象発現を規定する5-FU代謝酵素の遺伝子多型を同定する.【対象と方法】東北大学病院で5-FU系薬剤の投与を受けた胃癌,大腸癌患者の計103名を対象とした.解析遺伝子は,5-FU代謝に関わるDPYD,MTHFR,OPRT,TYMSの4遺伝子,計33遺伝子多型とした.同意取得のもと,末梢血を採取しDNAを抽出,Direct Sequence法,PCR-RFLP法,MassARRAYのいずれかを用い遺伝子多型を同定した.同定した遺伝子多型と有害事象(CTCAE:グレード3以上)の発現頻度を統計学的に解析した.【結果】DPYDのc.496G>A,c.1905+1G>A,c.2303C>Aのいずれかを有する患者(5.3%)には有意に有害事象が発現していた(p=0.003,OR=4.68,95% CI:1.71-12.8).また,特に全身倦怠感の発症と相関していた(p=0.007,OR=6.68,95% CI:1.87-23.9).なお,c.1905+1G>Aは,欧米でsplice site mutationとして報告されているが,日本人種では初の同定と思われた.さらに,MTHFRのc.1298A>Cをもつ患者(17%)は有意に好中球減少症を発症していた(p=0.002. OR=4.17,CI:1.76-9.86).【結語】同定した遺伝子多型を,5-FU投与前にスクリーニングすることで有害事象の発現抑制に寄与できる可能性が示唆された.
索引用語