セッション情報 パネルディスカッション2

好酸球性食道炎,好酸球性胃腸炎の病態,診断,治療

タイトル PD2-1[基]:

好酸球性胃腸炎と好酸球性食道炎の診療と研究の現状

演者 木下 芳一(島根大学第二内科)
共同演者
抄録 消化管に慢性的な好酸球を主とした細胞の浸潤がおこり炎症の持続に伴って消化管の形態と機能の障害を起こしてくる遅延型のアレルギー疾患を好酸球性消化管疾患と読んでいる.好酸球性消化管疾患は食道だけに好酸球の異常浸潤を認める好酸球性食道炎と食道病変の有無にかかわらず胃や腸管を含む消化管に好酸球の異常浸潤が認められる好酸球性胃腸炎に分けられる.本疾患に関して厚生労働省の研究班が設置され様々な研究と診療支援活動が行われてきた.研究班では2012年に日本の成人の好酸球性消化管疾患の現状を調査し報告した.調査時点では好酸球性食道炎に比べて好酸球性胃腸炎の発症率が高かった.好酸球性胃腸炎は男女差はなく20-70歳台の広い年齢層にみられ,約半数が喘息を主とするアレルギー疾患を合併していた.症状は下痢と腹痛であることがおおく,内視鏡検査で診断の補助となる特徴的な所見は少なかった.一方,好酸球性食道炎は50歳台に最も多く,その80%は男性であった.主症状は嚥下障害と胸焼けで,食道には縦走溝,多発輪状狭窄,白斑などの特徴的な所見を認めた.これらの調査結果に基づいて診断指針の案が作成されたが好酸球性胃腸炎に関しては消化管の各部位での正常好酸球浸潤数が均一でないこと,他の炎症性腸疾患との鑑別が時に困難であることなどの問題点が残っている.好酸球性食道炎に関しては臨床的には好酸球性食道炎と診断できる例の一部がプロトンポンプ阻害薬の投薬に反応して少なくとも一時的には症状の消失,内視鏡像の改善,浸潤好酸球数の減少がおこることが報告された.このようは例を好酸球性食道炎と診断するべきか胃食道逆流症の一部とするべきかまたプロトンポンプ阻害薬が有効である機序は何かに関して検討が続いている.海外と違って無症状例に検診目的で内視鏡検査が行われることの多い日本では無症状でありながら好酸球性食道炎に一致する内視鏡所見,病理組織所見を有する例も多数報告されておりこのような例を好酸球性食道炎と診断するべきか否かに関しても検討が行われている.
索引用語