セッション情報 パネルディスカッション2

好酸球性食道炎,好酸球性胃腸炎の病態,診断,治療

タイトル PD2-5:

上部消化管内視鏡検診受診者における食道好酸球浸潤の頻度

演者 阿部 靖彦(山形大学医学部内科学第二講座)
共同演者 野村 栄樹(山形大学医学部内科学第二講座), 上野 義之(山形大学医学部内科学第二講座)
抄録 【目的】本邦の好酸球性食道炎(EoE)の診断基準ではつかえ感などの症状があり,20個/HPF以上の好酸球浸潤(EE)を認める場合にEoEと診断され,米国の基準ではさらにPPIが無効であることが必要である.一方,EEにはPPIで所見が消失する例や無症状例などがあり,その病態は多様であることも示唆されている.今回,上部内視鏡検診受診者におけるEEの頻度を調査することを目的とした.【方法】当科および関連A病院にて2012年4月から2013年3月に筆頭著者が1名で行った上部消化管内視鏡検診受診者計291名(男247名,平均53歳)を対象とした.内視鏡検査で食道にEoEに特徴的とされる縦走溝,輪状溝,白色滲出物などの所見が認められた場合,生検を行い,好酸球浸潤の有無を評価した.15個/HPF以上の好酸球浸潤をEEとした.また,LA分類gradeA以上の逆流性食道炎(RE)の頻度についても調べた.【結果】291例中,REは35例(12.0%)に認められ(LA-A 24例,LA-B 11例),EEは5例(1.7%)に発見された.EEの内訳は男4例,女1例,平均54歳(36~74歳)で,縦走溝は4例(うち3例はEoEに特徴的される亀裂型縦走溝),輪状溝2例,白色滲出物は3例に認められた.内視鏡的な異常所見の分布は,食道胃接合部(EGJ)から口側1-2cm以内の小範囲限局例が3例,EGJ近傍を含む下部食道の斑状分布が1例,中・下部食道のびまん性分布が1例であった.生検での最大の好酸球浸潤数は33-155個/HPF(平均104.8個)で,とくに白色滲出物がみられた3例は平均133個/HPF,亀裂型縦走溝がみられた3例は平均124個/HPFの浸潤を認めた.全例が無症状で胃酸分泌抑制薬の服用はなく,花粉症を3例に認めた.【結論】EEは一般住民において比較的高頻度に存在している可能性があると考えられた.既報での本邦EoEの頻度からみて,すべてが典型的なEoEに進展するとは考えにくいが,今後の経過観察が必要と思われた.また,EoEに特徴的な内視鏡像を示すものの無症状である場合は定義上,EoEとは呼ばれず,内視鏡的な診断名・分類法の整理に関して検討が必要と考えられた.
索引用語