セッション情報 パネルディスカッション2

好酸球性食道炎,好酸球性胃腸炎の病態,診断,治療

タイトル PD2-9:

食道好酸球増多症の長期予後

演者 遠藤 博之(東北大学消化器内科)
共同演者 飯島 克則(東北大学消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学消化器内科)
抄録 【背景】近年,本邦でも食道好酸球増多症の報告が増加しているが,その長期予後は未だ明らかになっていない.本検討では食道好酸球増多症に関する長期予後を明らかにすることを目的とした.
【方法】食道好酸球増多症の定義として,特徴的内視鏡所見(縦走溝,輪状溝,白斑のいずれか)を有し,生検で15/HPF以上の好酸球浸潤を認めるものとした.2006年から2012年まで食道好酸球増多症と診断され,1年以上経過観察できている13症例を対象とし,投薬群と非投薬群とにわけて検討を行った.
【結果】<投薬群5例>患者背景:男性5例 平均年齢48.2歳(34~64歳)平均経過観察期間22ヵ月(14~30ヵ月)発見契機:症状の精査4例,検診1例 症状:つかえ感4例,胸焼け1例 全例に初期治療としてPPIが用いられ,うち4例の症状は改善しPPIの維持療法(1例),屯用または中止(3例)へと移行した.PPIが無効な1例はステロイド局所投与で症状の改善がえられた.内視鏡像:改善5例 好酸球浸潤数:減少3例,不変2例 <非投薬群8例>患者背景:男性7例,女性1例 平均年齢49歳(35~76歳)平均経過観察期間30.9ヵ月(22~45ヵ月)発見契機:検診6例,症状の精査1例,その他1例 症状:無症状6例,胸焼け1例,前胸部違和感1例 無症状6例のうち経過中に胸焼け症状の出現が2例にみられた.内視鏡像:不変6例 改善2例 好酸球浸潤数:不変6例 消失2例
【結論】投薬を要する症状としてはつかえ感の訴えが多く,その多くはPPIが有効であるが無効例も少数ながら存在し,無効例にはステロイド局所投与が有効であった.症状と内視鏡像の変化には関連がみられる傾向であったが,好酸球浸潤数については必ずしも関連は見られなかった.無投薬で経過観察した症例は内視鏡像や好酸球浸潤数の増悪をきたした症例はみられておらず,むしろ自然寛解する例もみられ,現時点では積極的な治療介入が必ずしも必要でない可能性も示唆された.
索引用語