セッション情報 パネルディスカッション3

抗血栓薬服用時の消化管傷害・出血の実態とその対策

タイトル PD3-3:

上部消化管出血の止血後,抗血栓薬の再開時期についての提案

演者 佐々木 亜希子(湘南鎌倉総合病院消化器病センター)
共同演者 所 晋之助(湘南鎌倉総合病院消化器病センター), 賀古 眞(湘南鎌倉総合病院消化器病センター)
抄録 抗血栓薬内服中の消化管出血に対して内視鏡的に止血後,抗血栓薬の再開時期についての明確な基準はない.抗血栓薬のうちアスピリンは上部消化管出血のリスクが1.68~2.5倍とされるが,中止による心血管イベント,脳梗塞の発症率は3倍で,約70%が休薬10日以内とされている.その他の抗血栓薬と上部消化管出血についての関連は報告されていない.【目的】内視鏡的止血術後の抗血栓薬の再開時期による再出血率,脳心血管イベントの発生率についての比較検討【方法】2012年4月から2013年9月までに,抗血栓薬内服中の上部消化管出血で当院にて内視鏡的止血術を施行した69例の患者を対象とした.止血法は血管収縮薬の局注とクリップ法併用,PPIを静注した.2012年4月から2013年3月までの47例では,入院時に抗血栓薬を全て中止し,退院と同時に全て再開した.平均休薬期間は8.73日であった.2013年4月から9月までの22例では,入院時に抗血栓薬を全て中止し,セカンドルックで止血を確認した後アスピリン以外の抗血栓薬を再開した.アスピリンは退院時より再開とした.アスピリン以外の抗血栓薬の平均休薬期間は3.31日,アスピリンの平均休薬期間は5.88日であった.両群について入院中の再出血率,退院後1か月以内の新規血管イベントの発症率を比較した.【結果】前者では抗血栓薬の再開後に再出血を認めなかったが,休薬1か月以内に脳梗塞,心筋梗塞,下肢動脈閉塞等の血管イベントが4例(8.5%)にみられた.後者では,抗血栓薬の再開後に再出血を認めず,休薬1か月以内の血管イベントも認めなかった.【結論】上部消化管出血に対して内視鏡による止血を確認した後,早期にアスピリン以外の抗血栓薬は再開が可能と考える.アスピリン以外の抗血栓薬はセカンドルック後から,アスピリンは休薬6日目の再開が,治療後の再出血を予防すると同時に休薬に伴うリスクを軽減すると考えられた.
索引用語