セッション情報 パネルディスカッション3

抗血栓薬服用時の消化管傷害・出血の実態とその対策

タイトル PD3-4:

抗血栓薬服用症例における出血性胃十二指腸潰瘍のマネジメント

演者 牟田口 真(小倉記念病院消化器内科)
共同演者 吉田 智治(小倉記念病院消化器内科), 白石 慶(医療法人白石胃腸科内科医院)
抄録 【目的】当院における,内視鏡的止血術を施行した,抗血栓薬服用中の胃十二指腸潰瘍出血症例の臨床像について報告し,対応策につき考察する.【方法・成績】当院では常時消化器内科医が待機し,消化管出血に対し迅速に止血術を行っている.抗血栓薬は,可能であれば,止血が確認されるまで休薬することとしている.薬剤溶出性ステント(Drug-eluting stent:DES)留置例ではステント血栓症の合併リスクを考慮し,止血術周期も原則アスピリンは休薬しない方針とした.平成15年4月から平成25年3月までの10年間に内視鏡的止血術を施行した出血性胃十二指腸潰瘍660例のうち,抗血栓薬の服用例は362例(54.8%)であった.全例脳・心血管系疾患を併存し,DES留置例を26例に認めた.低用量アスピリンは278例(42.1%),ワルファリンは128例(19.3%)で服用していた.2種類以上の抗血栓薬服用例は164例(24.8%)であった.多くの症例は一回で止血可能であったが,82例(22.7%)では複数回の止血術を要した.中でも,複数回の止血術を要したDES留置例(9例)では抗血小板薬の取り扱いに苦慮した.また,出血に伴いアスピリンなどの抗血栓薬を休薬中(投与中止6~60日)に8例で,血栓塞栓症を合併した.そして,362例中29例(8.0%)は発症3ヶ月以内に死亡退院した.29例中9例は内視鏡的に止血不能で,残り20例は止血し得たが,出血を契機に併存疾患の悪化や,感染症,血栓塞栓症の合併により死亡した.【結論】抗血栓薬服用中の胃十二指腸潰瘍出血症例では,出血を契機に併存疾患の増悪や,感染症,血栓塞栓症の合併により重篤な転帰を辿る可能性がある.確実な止血,止血術の周術期の併存疾患並びに合併症の管理,および止血達成後の早急な抗血栓薬の再開が重要である.またDES留置例における潰瘍出血予防ならびに,出血時の抗血小板薬の取り扱いについては今後の検討を要する.
索引用語