セッション情報 |
パネルディスカッション3
抗血栓薬服用時の消化管傷害・出血の実態とその対策
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タイトル |
PD3-7:上部消化管出血患者における抗血栓薬服用の実態と休薬期間の検討
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演者 |
樋高 秀憲(佐賀大学医学部光学医療診療部) |
共同演者 |
山口 太輔(佐賀大学医学部消化器内科), 岩切 龍一(佐賀大学医学部光学医療診療部) |
抄録 |
【目的】近年抗血栓薬内服患者は増加傾向にあり,抗血栓薬による消化管出血リスクも増加している.今回我々は緊急内視鏡的止血術を要した非静脈瘤性の上部消化管出血(UGIB)患者における抗血栓服用の実態と止血術に関連した抗血栓薬の休薬期間について検討した.【方法】対象は2002年1月から2013年8月の間,当院において緊急内視鏡的止血術を要したUGIB患者530例.抗血栓薬内服状況とその患者背景,基礎疾患の検討を行った.また「抗血栓薬服用者に対する消化管内視鏡診療ガイドライン」の導入前(2002年~2012年6月)と導入後(2012年7月~2013年8月)における抗血栓薬の休薬期間と治療成績(死亡率,止血率,再出血率)について検討した.【成績】UGIB患者の中で抗血栓薬を服用していた患者は145例(27.4%)であり,単剤内服患者108例(20.4%),多剤内服患者37例(7.0%)であった.患者背景として,抗血栓療法患者は高齢で(72.6 vs 62.6歳,p=0.000),入院時Hb値は低下しており(8.57 vs 8.80g/dl,p=0.000),ピロリ菌感染陽性率は減少していた(46.9 vs 61.8%,p=0.008).基礎疾患として,主要疾患である心血管障害,脳血管障害以外にも高血圧症(p=0.000)や糖尿病(p=0.012)も危険因子と考えられた.UGIBの原因疾患としては消化性潰瘍が103例(71.0%)と最も多かったが,近年はangioectasiaからの出血(5.5%)やGERDからの出血(3.4%)など,潰瘍以外の原因も増加していた.また新ガイドライン導入前の抗血栓薬休薬期間は7~10日,導入後の休薬期間は1~3日と明らかに短縮されたが,導入前後における治療成績(死亡率,止血率,再出血率)に関しては,いずれも有意差は認めなかった.【結論】UGIBにおける抗血栓薬内服患者は,高齢で基礎疾患も多く,貧血が進行している症例も多いが,止血術後の休薬期間の短縮は治療成績には影響しなかった.適切な止血術後には,血栓症発症のリスクを軽減するため,速やかに抗血栓薬を再開すべきであると考えられた. |
索引用語 |
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