セッション情報 |
パネルディスカッション3
抗血栓薬服用時の消化管傷害・出血の実態とその対策
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タイトル |
PD3-8:出血性胃十二指腸潰瘍における薬剤使用例の経時的推移と治療成績の検討
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演者 |
長末 智寛(松山赤十字病院胃腸センター) |
共同演者 |
川崎 啓祐(松山赤十字病院胃腸センター), 蔵原 晃一(松山赤十字病院胃腸センター) |
抄録 |
【目的】出血性胃十二指腸潰瘍において抗血栓薬および非アスピリンNSAID(以下NSAID)使用例の経時的推移と治療成績を明らかにすること.本検討においては,抗血栓薬は低用量アスピリン(LDA)を含む抗血小板薬と抗凝固薬とした.【方法】最近11年3か月間に当センターで内視鏡的止血術を施行した出血性胃十二指腸潰瘍678例を前期(前半の5年8か月間)と後期(後半の5年7か月間)に分け,薬剤使用状況とHP感染率を比較検討した.また抗血栓薬は種類を問わず継続し,抗血栓薬使用群と非使用群での治療成績を比較検討した.【成績】出血性胃十二指腸潰瘍678例は平均年齢67歳,男性458例,女性220例で,抗血栓薬が204例(30.1%)で,NSAIDが223例(32.9%)で使用され,HP感染率は64.5%であった.薬剤使用状況とHP感染率を前期後期に分けて検討すると,前期334例では抗血栓薬96例(27.9%)で,LDA32例(9.6%),LDA以外の抗血栓薬44例(12.8%),併用20例(5.8%)であり,NSAIDは89例(25.9%)で,HP感染率は71.8%であった.後期344例では抗血栓薬109例(32.3%)で,LDA33例(9.9%),LDA以外の抗血栓薬48例(14.4%),併用28例(8.4%)であり,NSAIDは134例(40.1%)で,HP感染率は58.9%であった.前期に比べ後期では抗血栓薬使用率は微増傾向で,NSAID使用率は有意に高値(p<0.01)であり,HP感染率は有意に低値(p<0.01)であった.抗血栓薬使用群と非使用群で治療成績を比較すると,再出血率は抗血栓薬使用群で13.5%,非使用群で8.5%と抗血栓薬使用群で有意に高値(p<0.05)であったが,止血率に有意差は認めなかった.【結論】過去11年3か月間を前期後期に分けて検討を行った結果,出血性胃十二指腸潰瘍はHP起因性から薬剤起因性へと大きくシフトしており,抗血栓薬を含む薬剤起因性出血性潰瘍の予防が急務であると思われた.また抗血栓薬使用群では非使用群に比べ再出血率は高いものの抗血栓薬継続下においても止血率に差はなく,その中止のリスクを考慮すると慎重な対応のもと使用継続下での加療が望ましいと考えられた. |
索引用語 |
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