セッション情報 パネルディスカッション3

抗血栓薬服用時の消化管傷害・出血の実態とその対策

タイトル PD3-12:

抗血小板薬内服継続下ESDの治療成績―PGAフェルト+フィブリン糊被覆法を用いた新たな後出血予防対策―

演者 山口 直之(長崎大学病院光学医療診療部)
共同演者 福田 浩子(長崎大学病院消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院光学医療診療部)
抄録 【目的】2012年 抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが作成され,抗血栓薬継続による出血リスクのみならず休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮されている.今回,我々は血栓症高リスク患者に対して抗血小板薬内服継続下にESDを施行し,後出血予防目的にESD後潰瘍にPGAフェルト+フィブリン糊を貼付し,その後出血予防効果を含め抗血小板薬内服継続下ESDの安全性を検討した.【対象・方法】2013年3月~9月までに当科にてESDを施行した135症例中,抗血小板薬内服継続下にESDを施行した15症例18病変(食道5症例8病変,胃5症例5病変,大腸5症例5病変)を対象(うち11症例にPGAフェルト+フィブリン糊被覆法を施行)とし,下記の項目について検討した.1)治療成績,2)偶発症(術中出血コントロール,後出血,穿孔),3)PGAフェルト残存期間・残存率(大腸症例はフォロー不可のため,食道/胃症例7症例を対象とした)*術中出血コントロール不良基準:術中出血を認め,治療後のHb値が2以上低下した場合*PGAフェルト残存期間基準:貼付した潰瘍面に対して50%以上被覆されている期間【結果】1)一括完全切除率:88.9%,一括治癒切除率:83.3%,一括切除率:100% 2)術中出血コントロール不良率:0%,後出血率:0%,穿孔率:0%(対象期間内における非内服例及び休薬例の後出血率は順に5.5%(6/110),20%(2/10)であり,有意差はないものの継続例の方が0%と低かった)3)PGAフェルト残存期間:平均12.9日,残存率:1日後100%,7日後86%,14日後57%,28日後14%【結論】抗血小板薬内服継続下ESDを15症例に施行し,11症例にPGAフェルト+フィブリン糊被覆法を施行した.全例で後出血を含め偶発症は1例も認めなかった.また,PGAフェルト残存期間は平均13日で,後出血の好発時期である5~8日を被覆できており,抗血小板薬内服継続下にてもこの被覆法により,より安全にESDを施行できる可能性が示唆された.
索引用語