抄録 |
Rome III基準では,FD患者をEPS群とPDS群に分類しており,FDの新たな治療薬であるacotiamideがPDS群に対して高い奏功率を示していることが報告されている.そこで我々はFD群をEPS,PDS,EPS-PDS overlap群に亜分類し,臨床症状や胃排出能,睡眠障害,QOLの比較検討を行い,興味深い結果を得たので,報告する.(方法)FD群80名(PDS65名,EPS 47名,EPS-PDS-overlap 33名),健常者群44名を対象とした.胃排出能は13-C acetate呼気試験法に基づき行った.臨床症状はGDSSスコア,睡眠障害はPSQIスコア,心気面に関しては,STAIスコア,QOLはSF-8(PCS,MCS)で評価した.(結果)GDSSおよびPSQI,STAIスコアは,FD群(EPS,PDS,EPS-PDS-overlap群)で健常者群に比較し有意に高いもののFDの亜群3群間では有意な差は認められなかった.SF-8もFD群で有意に低値であったが,FD亜群間では有意差は認められなかった.また,胃排出能はFD群で有意に障害されていたが,FD亜群間には有意差は認めなかった.さらに,PSQIとGDSSスコアとの間にはPDS群,EPS群,EPS-PDS overalp群で有意な相関を認めたが(p=0.002,R=0.416;p=0.027,R=0.354;p=0.039,R=0.408),健常者群では有意な相関を認めなかった.また,PSQIとSF-8(PCS,MCS)は,PDS群,EPS-PDS-overlap群で有意な相関を認めたが(PCS:p<0.0001,R=0.524,MCS:p<0.0001,R=0.762;PCS:p=0.013,R=0.482,MCS:p<0.0001,R=0.720),EPS群ではSF-8(MCS)とPSQIスコアにおいてのみ,有意な相関を認めた(p<0.001,R=0.629).一方で,健常者群においては,PSQIとSF-8には有意な相関を認めなかった.(結語)FDの亜群ではEPS群において,SF-8(PCS)とPSQIスコアとの間に有意な相関関係が得られずPDS群,EPS-PDSoverlap群と異なる傾向にあり,さらなる検討が必要と考えられた. |