セッション情報 パネルディスカッション4

FDの亜分類と治療選択

タイトル PD4-5:

Rome III基準でのFD診断の実態と亜分類から見た病態関連予測

演者 富永 和作(大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 藤川 佳子(大阪市立大学消化器内科学), 田中 史生(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 【目的】Rome IIIにある症状頻度,部位,onsetならびに罹病期間が明記された質問紙票でのFD診断率,FD確定診断患者での病態解析と下位分類別での関与率を解析した.【方法】検討1:11施設の消化器内科を受診したディペプシア患者175名を対象とし,新規質問紙(Naniwa Scale)[症状頻度(5段階),症状の部位(8領域を図式化),症状の程度(5段階)]を用い,onsetと罹病期間の問診と内視鏡検査を含めた最終診断で検討した.検討2:当院でのinvestigated FD患者を,PDS,EPSに亜分類し,胃運動機能(貯留能,排出能),自律神経機能,内視鏡的粘膜萎縮,腸上皮化生の有無,粘膜発赤,H. pylori感染について比較した.【成績】検討1:解析対象118例(男:女=51:67,平均51.5歳)で,FD疑診例は78例(66.1%)であり,内視鏡検査を含めRome III基準を満たしたFD群は24.6%(29/118)であった.期間の不一致は25.4%(30/118),器質病変を認めたのは13.6%(16/118)存在しそのうち症状でRome III基準を満たしたものは56.3%(9/16)であった.FDと誤診されていたものは14.4%(17/118)であった.FD確定診断率は24.6%である一方,Rome III基準を満たさない非器質性患者が51.7%(61/118)存在した.検討2:PDSとEPSでの亜分類で,胃貯留能障害(47.5 vs. 52.4%),胃排出能障害(55% vs. 57.1%),副交感神経系機能の低下(87.5% vs. 85.7%),交感神経系機能亢進(54.2% vs. 47.6%),内視鏡的胃粘膜萎縮(72.4% vs. 66.6%),腸上皮化生(28.6% vs. 20.0%),粘膜発赤(40% vs. 60%),H. pylori感染率(57.6% vs. 53.3%)に差はなかった.【結論】Rome III基準を用いた慎重な診断と,病態予測には亜分類だけではなく個別予測が必要であると思われた.
索引用語