セッション情報 パネルディスカッション5

薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate―

タイトル PD5-1:

下部消化管出血患者におけるNSAIDsと輸血,院内死亡との関連:Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いた検討

演者 新倉 量太(東京大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学), 小池 和彦(東京大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【背景】下部消化管出血は,頻度が高く時に重篤な転帰をとりうる.しかし,下部消化管出血患者の死亡に関する大規模な検討は乏しい.DPCデータベースは日本の急性期病院の入院患者の約50%,年間700万人をカバーする大規模なデータベースである.今回,このデータベースを用いて,下部消化管出血患者におけるNSAIDsの使用と入院中の輸血および院内死亡の関連について検討した.【方法】2010年7月から2012年3月までに,下部消化管出血を契機として入院した患者を対象とした.入院中の輸血の有無または在院死亡を従属変数,年齢・性別・基礎疾患・病院の種別・抗血栓薬の使用・NSAIDsの使用・body mass index(BMI)等を独立変数とするロジスティック回帰分析を行った.【結果】39,491人の対象者の年齢中央値は74歳,男性が52.5%であった.出血の主な原因は大腸憩室出血(24.3%)であった.全体の院内死亡は1,023人(2.6%)であり,院内死亡率は出血の原因により異なっていた(大腸憩室出血0.7%,虚血性腸炎1.6%,感染性腸炎3.0%等).NSAIDs使用者(n=7,877)における院内死亡率は4.2%,非使用者(n=31,614)における院内死亡率は2.2%であり,前者が有意に高かった(p<0.001).ロジスティック回帰分析では,NSAIDs使用は入院中の輸血(オッズ比2.04,95%信頼区間1.90-2.19 p<0.001)及び院内死亡(オッズ比1.62,95%信頼区間1.37-1.91 p<0.001)と有意に関連していた.【結語】下部消化管出血による入院患者において,NSAIDsが入院中の輸血と院内死亡に有意に関連していた.NSAIDsの使用が出血を助長している可能性が示唆された.
索引用語