セッション情報 パネルディスカッション5

薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate―

タイトル PD5-4:

下部消化管出血における薬剤の影響とリスクreduction

演者 永田 尚義(国立国際医療研究センター消化器内科)
共同演者 青木 智則(国立国際医療研究センター消化器内科), 秋山 純一(国立国際医療研究センター消化器内科)
抄録 【目的】抗血栓薬の種類,2剤併用と下部消化管出血との関連の知見は乏しい.さらに,リスク薬剤の中止変更における出血イベントの再発抑制効果は不明である.今回,下部消化管出血の中でも最も多い原因であり,再発率の高い疾患の一つである大腸憩室出血に注目し,薬剤との関連を明らかにする.【方法】対象は,前向きに登録された大腸憩室症(758例)と大腸憩室出血(153例)である.内視鏡当日に9種類のNSAIDs,2種類の低用量アスピリン,10種類の抗血小板薬(アスピリン以外),3種類の抗凝固薬,アセトアミノフェン,ステロイド内服の有無を調査した.年齢,性別,アルコール,喫煙,Charlson comorbidity indexをロジスティック回帰モデルに組み入れたadjusted odds ratio(aOR)を算出した.NSAIDs内服出血患者においては,薬剤の中止(変更)群と続行群による退院後の長期再出血率をカプランマイヤー法およびログランク検定にて解析した.【結果】多変量解析にて,ロキソプロフェン(aOR5.0),ジクロフェナク(aOR3.1),ジクロフェナク坐剤(aOR8.0),エドトラク(aOR4.9),アスピリン腸溶錠(aOR3.9),bufferedアスピリン(aOR9.9),クロピドグレル(aOR2.5),シロスタゾール(aOR7.3)使用が独立した出血リスクであった.2剤併用は単剤と比べ出血のリスクが上昇した(NSAIDs単剤,aOR 3.6,p<0.01;2剤,aOR 23,p<0.01;抗血小板単剤,aOR 2.0,p<0.01;2剤,aOR 4.1,p<0.01).NSAIDs内服出血患者41人中26人が退院後に中止変更しえた.平均観察期間12カ月で,累積再出血率は続行群77%に対し,中止群は9.4%(p<0.01)であった.【結論】様々なNSAIDs,抗血小板薬が出血のリスクであり,2剤併用でリスクが上昇した.NSAIDsの中止変更は再出血率を有意に低下させた.
索引用語