セッション情報 パネルディスカッション5

薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate―

タイトル PD5-5:

大腸憩室出血における関与薬剤の検討―アスピリンとの関連を中心に

演者 黒澤 学(大阪府済生会中津病院消化器内科)
共同演者 福知 工(大阪府済生会中津病院消化器内科), 蘆田 潔(大阪府済生会中津病院消化器内科)
抄録 【目的】上部消化管出血のcommon diseaseである消化性潰瘍のrisk factorや治療は確立しているが下部消化管出血のcommon diseaseである大腸憩室出血の臨床的検討は少ないと言わざるを得ない.今回,大腸憩室出血における薬剤の関与と臨床的特徴を検討した.【方法】対象は過去10年に受診した大腸憩室出血194症例(平均年齢68.7歳,男女比125:69)である.これとランダムに選択した年齢,性別に有意差のない上部潰瘍出血群(n=194,平均年齢69.4歳,男女比123:71)とコントロール群(n=194,平均年齢67.9歳,男女比134:60)を作成しNSAIDs,アスピリン,非アスピリン抗血栓薬の服用率を検討した.またアスピリンを服用していた大腸憩室出血に関しては輸血状況を検討した.【成績】NSAIDsの服用率は(憩室出血群,上部潰瘍出血群,コントロール群)で(17.0%,35.6%,5.5%)で上部潰瘍出血群で他の2群に比して有意に高かった.アスピリンの服用率は(34.5%,15.9%,6.1%)で憩室出血群で他の2群に比して有意に高かった.非アスピリン抗血栓薬の服用率は(22.1%,22.6%,3.3%)で憩室出血群と上部潰瘍出血群で有意に高かったが両群間に有意差はなかった.アスピリンのみ服用の大腸憩室出血33例の輸血率,平均輸血量は36.3%,1.6単位,NSAIDs/アスピリン非服用の大腸憩室出血98例は13.2%,0.6単位で両者ともにアスピリンのみ服用の大腸憩室出血で有意に高かった.【結論】大腸憩室出血において最も関連が深い薬剤はアスピリンであり,従来関連が強いとされてきた上部潰瘍出血よりも更に関連が深いと考えられた.更にアスピリンを服用して発症する大腸憩室出血は出血量が多いことが推測される.本邦では高齢化に伴いこのような症例の増加が懸念され,今後の予防を含めた検討が望まれる.
索引用語