セッション情報 | パネルディスカッション5薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate― |
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タイトル | PD5-7:全身+局所投与によってアスピリン起因性小腸傷害が惹起される |
演者 | 富田 勉(筑波大学数理物質科学研究科) |
共同演者 | 金子 剛(筑波大学消化器内科), 松井 裕史(筑波大学消化器内科) |
抄録 | 【目的】アスピリン(ASP)は抗血小板薬として500万人以上に服用されている.同薬剤は5年以上の服用で30%に何らかの消化管傷害が惹起される薬剤であり,有効な治療法確立が必要である.ASP起因性消化管傷害は,COX阻害によってプロスタグランディン産生が抑制され,防御因子である粘液が不足するために惹起されると理解されてきたが,攻撃因子である胃酸のない下部消化管での消化管出血病変の形成機序は現在もなお不明であり,その治療法も確立されていない.今回我々はASP投与後のマウス小腸粘膜を直接経時的に観察しながら投与法を検討した結果,再現性をもって小腸傷害を惹起する実験モデルの確立とその機序の解明に成功したので報告する. 【方法】in vivo ICRマウスを麻酔下に開腹し,小腸粘膜を観察可能な実験系を確立した.粘膜上の死細胞をPIで,細胞内活性酸素をAPFで染色し,経時的変化を観察・測定した.マウスをa)正常コントロール群,b)局所投与群,c)全身+局所投与群の3群に分け,それぞれa)sham operationのみ,b)露出小腸粘膜にASP 6mg/mL溶液20μLを局所滴下投与,c)ASP200mg/kg全身投与ののち4時間後に局所にASP 6mg/mL溶液20μLを局所滴下投与した.さらに上記c)実験のASP投与15分前にrebamipide 30mg/kgを経口投与し,傷害への効果とMnSOD発現量を測定した. 【結果】ASP投与は小腸上皮細胞にROS産生を惹起した.局所投与のみでは血管床に及ぶ障害は惹起されなかったが,ASP全身投与後に局所投与した系では絨毛の上皮が容易に崩落し,血管の露出状態が誘導された.Rebamipideは細胞・粘膜にMnSODを誘導し,ASPによる粘膜のROS量を抑制し,粘膜傷害を抑制した. 【結語】ASP全身投与+局所投与によってマウス小腸出血病変が惹起された.このモデルは持続的ASPによる小腸病変の機序解明と治療法開発に有用と考えられた.同病変形成にはミトコンドリア由来ROSが関与し,ミトコンドリア特異的SODを誘導する薬剤がASP腸炎の予防と治療に有用であることが示唆された. |
索引用語 |