セッション情報 パネルディスカッション5

薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate―

タイトル PD5-9:

非ステロイド系抗炎症薬起因性小腸傷害におけるインフラマソームおよびinterleukin-1βの意義

演者 谷川 徹也(大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 東森 啓(大阪市立大学消化器内科学), 渡辺 俊雄(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 【目的】インフラマソームはcaspase-1前駆体とASC(apoptosis-associated speck-like protein containing a CARD)およびNOD-Like receptor(NLR)で構成される分子複合体でありcaspase-1を活性化させる機能を有する.種々の炎症惹起物質により活性化されたインフラマソームはcaspase-1を活性化させ,活性型caspase-1は未熟型interleukin(IL)-1βおよびIL-18を成熟型へと変換し細胞外への分泌を促進させ炎症反応の誘導や進展,細胞死などを誘発する.本研究では非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)起因性小腸傷害の発症におけるインフラマソームおよびIL-1βの意義を実験マウスモデルを用いて検討した.【方法】インドメタシン(IM)経口投与後の小腸組織における炎症性サイトカインとNLRsの遺伝子発現動態を定量的リアルタイムRT-PCR法によって評価し,IL-1βのタンパク量をELISA法により検討した.また,NSAIDs起因性小腸傷害に対するIL-1βの役割を検討するためにIL-1βに対する中和抗体を投与し,インフラマソームの役割を同定するためにNLRP3およびcaspase-1欠損マウスにIMを投与し小腸傷害発生をコントロール群と比較した.【結果】IM投与により小腸傷害が認められIM投与6時間後からIL-1βのmRNAの発現亢進が認められた.また,IL-1βの小腸組織中タンパク量はmRNAの変化とほぼ相関していた.NLRsの中でNLRP3でのみIM投与によりmRNAの有意な上昇が認められたが,他のNLR(NLRC4,AIM2,NLRP6)は上昇を認めなかった.IL-1β中和抗体の投与はIM起因性小腸傷害の程度を半減させた.また,caspase-1およびNLRP3欠損マウスでもIM起因性小腸傷害の程度は野生型マウスに比べ軽微であった.傷害小腸におけるNLRP3の発現は,免疫組織学的に炎症細胞と一部の上皮細胞に発現を認めた.【結論】NLRP3インフラマソームによるIL-1βの活性化はNSAIDS起因性小腸傷害の発生に極めて重要な役割を有する可能性が示唆された.
索引用語