セッション情報 パネルディスカッション5

薬剤起因性下部消化管粘膜傷害―基礎と臨床のUpdate―

タイトル PD5-11:

非ステロイド系消炎鎮痛剤起因性小腸粘膜傷害の病態と,健常ボランティアにおける臨床試験についての検討

演者 倉本 貴典(守口敬任会病院消化器内科)
共同演者 梅垣 英次(大阪医科大学第2内科), 樋口 和秀(大阪医科大学第2内科)
抄録 【目的】原因不明消化管出血(OGIB)において,カプセル内視鏡(CE)を用いた小腸病変診断の有用性について様々な報告がなされている.NSAIDsは胃のみならず小腸においても粘膜傷害を惹起するが,酸が関与しない小腸粘膜傷害のメカニズムや傷害に対する予防法については未だ明らかでない点が多く,動物実験において酸分泌抑制薬は小腸傷害を悪化させるとの報告もある.低侵襲なCEの普及により高齢患者で診断されるが,原因薬剤の減量中止は困難な場合が多く存在する.今後の疾患増加に際し,治療の確立が急がれる.今回基礎研究にて有効性が証明された薬剤を用いて,ボランティアを対象としたNSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対する消化性潰瘍治療薬の臨床効果について検討した.
【方法】基礎研究にて有効性の証明されたTeprenone(TP),Irsogladine(IG)を用いてボランティアを対象とした臨床試験を行った.Diclofenac(DI)に対する効果の検討として,防御因子増強剤ではTP,IG,酸分泌抑制剤ではomeprazole(OM),Famotidine(FM)を比較し,それぞれ2週間の投薬前後で胃カメラ(EGD),カプセル内視鏡(VCE),便中calprotectinを計測した.
【成績】TPはFMに比して,DIによる食道・胃粘膜傷害を同等に抑制し,小腸病変数(p=0.019)及び便中calprotectin(p=0.041)においては有意に抑制した.また,IGはOMに比して,DIによる食道・胃粘膜傷害を同等に抑制し,小腸病変数(p=0.012)及び便中calprotectin(p=0.028)においては有意に抑制した.
【結論】基礎的な成績をもとに臨床試験を行い,小腸病変を抑制した防御因子増強薬は,食道・胃粘膜病変を酸分泌抑制薬と同等の抑制効果が得られたことで,食道から小腸までの病変を一剤で守る可能性も示唆される.
索引用語