セッション情報 |
パネルディスカッション6
IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで
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タイトル |
PD6-5:IBSモデルにおける大腸グリア細胞の形態変化と大腸運動機能への影響
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演者 |
藤川 佳子(大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学) |
共同演者 |
田中 史生(大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学), 富永 和作(大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学) |
抄録 |
【目的】IBSでは「下部消化管内視鏡で異常が無い」という概念は今や過去のものとされ,ストレスによる腸管神経系システムへの異常応答を含め,組織学的変化が注目されつつある.IBSモデルとされる母子分離ストレス(maternal separation:MS)ラットを用いて,大腸筋層間神経叢にあるグリア細胞(enteric glial cell;EGC)の形態変化と経壁電気刺激(electrical field stimulation;EFS)による神経電気生理学的反応性について検討した.【方法】Wistar系雄性ラットの生後2日目~14日目まで1日3時間MSを受けたMS群とコントロール群(Control)に対して,8週齢時に水浸急性ストレス(AS)を負荷した.whole mount標本においてEGCマーカーであるglial fibrillary acid protein(GFAP)抗体および腸管神経細胞マーカーであるHuC/D抗体を用いた蛍光免疫染色を行い神経細胞数の数量ならびにEGCの形態変化を評価し,EFSによる腸管収縮反応を評価した.【結果】1)AS,MSストレス負荷により,一神経節あたりに存在するHuC/D陽性腸管神経細胞数は変化しなかったが,EGC突起は神経細胞体に対して被覆伸展し,その被覆率はMS+AS群でControlに比し5倍増加していた(p<0.05).2)伸展したEGC突起先端の形態は,MS負荷によりfilament-likeからleaf-likeへと変化し,MS群と比較しMS+AS群で顕著であった(6.1% vs. 15.2%,p<0.05).3)EFS刺激による腸管収縮反応は,刺激強度に応じて増加し,tetrodotoxin前投与で抑制された.4)グリア細胞代謝阻害剤であるgliotoxin:300μM投与60分後ではEFSによる収縮反応が抑制され,その抑制率はMS+AS群ではContに比し低かったが(81%vs.37%),1mMではContと同程度にまで抑制された.【結論】ストレス応答によりEGCの形態,腸管神経機能が変化し,大腸運動機能異常に関与することが示唆された. |
索引用語 |
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