セッション情報 パネルディスカッション6

IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで

タイトル PD6-6:

ヒト樹状細胞および腸内細菌叢の過敏性腸症候群への病態関与

演者 小井戸 薫雄(東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科)
共同演者 大草 敏史(東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科), 田尻 久雄(東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】Corticotropin-releasing hormone(CRH)やurocortin(UCN)は,腸管運動を亢進させる作用があるため,過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome,IBS)の病態に関与していると考えられている.また,消化管は常に腸内細菌叢にさらされているため,消化管免疫システムを備えている.そこで,CRHやUCNと抗原提示細胞である樹状細胞や腸内細菌叢との関連性に関して検討した.【方法】ヒト健常人5名の末梢血単核球よりGM-CSFとIL-4にて誘導した樹状細胞(dendritic cell,DC)に,以前から病原性が示唆されているClostridium clostrodiiformeC. clostrodiiforme),Bacteroides vulgatusB. vulgatus),Escherichia coliE. coli),Fusobacterium variumF. varium)とprobioticsとされているLactobacillus blugariusL. blugarius)をin vitroで暴露し,DCから産生されるCRHおよびUCNをreal-time PCRとELISA法にて検討した.【成績】DCとB. vulgatusまたはF. variumの暴露30分後に,DCにおけるCRHおよびUCNのmRNAの増加が認められた.また,DCとB. vulgatusまたはF. variumの暴露24時間で,DCよりCRHの産生は,それぞれ33.67±11.32 pg/mlと15.70±4.64 pg/mlであった.また,URNの産生は,それぞれ800.1±221.9 pg/mlと207.5±55.57 pg/mlであった.一方,その他の腸内細菌によりCRHおよびUCNの産生はほとんど認められなかった.【結論】B. vulgatusおよびF. variumはDCからのCRHおよびUCNの産生を介して,IBSの病態に関与している可能性が示唆された.
索引用語