セッション情報 パネルディスカッション6

IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで

タイトル PD6-7:

IBSにおけるカプセル内視鏡を用いた新たな病態評価の試み

演者 橋本 真一(山口大学消化器病態内科学)
共同演者 柴田 大明(山口大学消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学消化器病態内科学)
抄録 【目的】IBSの診断や病状判定は症状に依存する割合が大きく,客観的にIBSの病態評価を可能とする検査手技の確立が望まれている.既存の腸管機能検査は,侵襲が高いものや実施可能な施設が限られていることも多く,消化管全体の評価も困難である.カプセル内視鏡は小腸全体の情報を低侵襲に得ることが可能であり,腸管粘膜面の情報だけでなく,カプセルの移動速度や,腸管内残渣およびその局在も把握することが可能である.カプセル内視鏡でIBSの病態評価を行った報告は少なく,その有用性を検討した.【方法】2007年11月より2013年8月までに当院にて施行したカプセル内視鏡検査354件のうち,Rome3診断基準によりIBSと診断された12件をIBS群(下痢型7件,便秘型5件),残りの342件のうち活動性出血,小腸部分切除術後,小腸狭窄,胃内停滞例,アミロイドーシスおよび炎症性腸疾患を除外した175件を対照群として検討した.【成績】IBS群全体と対照群を比較した場合,有意差を認める項目はなかったが,IBS群を便秘型と下痢型に分けて検討したところ,検査開始後8時間以内に大腸まで到達した症例の割合は,下痢型IBS群7/7件(100%),便秘型IBS群1/5件(20%),対照群130/175件(74.2%)であり,下痢型IBSで便秘型IBSに比較して高く,小腸通過時間に関しては,下痢型IBS群で対照群に比較して有意に短いことが明らかとなった(下痢型IBS群 平均220分,対照群 平均279分;p=0.035).カプセル内視鏡画像に関しては,便秘型IBS群では腸管が拡張している状態が長く持続し,腸液や残渣が多く貯留している像が多くみられ,下痢型IBS群では腸管の収縮像を高頻度に認めた.【結論】IBSの病態とカプセル内視鏡の腸管移動時間および所見は関連を認め,カプセル内視鏡はIBSの病態評価に有用な検査手技となりうる可能性が示唆された.
索引用語