セッション情報 パネルディスカッション6

IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで

タイトル PD6-8:

過敏性腸症候群における大腸憩室の影響に関する検討

演者 山田 英司(横浜市立大学附属病院内視鏡センター)
共同演者 高橋 宏和(横浜市立大学附属病院内視鏡センター), 中島 淳(横浜市立大学附属病院内視鏡センター)
抄録 【目的】食生活の欧米化に伴い大腸憩室症は増加している.大腸憩室は,腸管運動障害,慢性炎症,内臓知覚過敏との関連が指摘されている.これらの因子は,過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)のリスクと重複する点が多く,欧米に多い左側型憩室はIBSとの関連が指摘されている.一方,右側型憩室が多い本邦では大腸憩室症とIBSの関連についての報告はない.本研究ではIBSにおける大腸憩室の臨床的寄与を検討した.【方法】横浜市立大学附属病院およびその関連6施設で行った「大腸憩室と過敏性腸症候群の関係についての検討」研究に登録された911症例(平均年齢64.3±12.9,男女比1:0.61)を対象に解析を行った.大腸憩室の評価は下部消化管内視鏡検査で行った.IBSはRomeIIIを診断基準とした.【結果】IBS群(n=69)と非IBS群(n=842)の単変量解析では,左側型憩室はIBS群に多かったが(P<0.005),右側型憩室では有意差を認めなかった.多変量解析では,IBS群において,左側型憩室(OR 2.05;95%信頼区間1.05-4.02)は独立した因子であった.IBS群69例中,左側憩室群(n=22)と対照群(n=47)では,下痢型IBS,便秘型IBSともに有意差は認めなかった.【結論】IBSの診断は,器質的疾患の除外およびRomeIIIの診断基準を基に行われる.これまで大腸憩室はIBSとの関連性を指摘されてきたが,本検討により本邦に多い右側型憩室は,IBSとの関連性は低いことが示された.一方で,左側型憩室についてはIBSと強い相関を示したが,IBSのタイプには関連性を認めなかった.S状結腸は,内臓知覚や,排便機能に関与していることが知られている.左側憩室がIBSを合併する病態メカニズムについては検討を要す.
索引用語