セッション情報 パネルディスカッション6

IBS病態研究の進歩と本邦における臨床実態―ベンチからベッドサイドまで

タイトル PD6-14:

過敏性腸症候群に合併した便排出障害について

演者 壬生 隆一(福岡山王病院外科)
共同演者
抄録 (はじめに)過敏性腸症候群(IBS)では腹痛や腹部膨満感を便排出障害のためと考えるなど,排便に対する不満感が強く,残便感・肛門狭窄感・便柱狭小化などの症状に敏感であることが多い.また,IBSにおいては直腸感覚鋭敏化を指摘する論文も多く,直腸肛門機能障害を合併していることが多い.しかし,IBSに合併した便排出障害(OO)はIBSを合併しないOOと違いがあるかどうかの報告はない.今回,IBSにOOを合併した場合(IBS群)とOOのみの場合(OO群)でIBSに特徴的なものがあり,IBSに合併するOOの治療法に工夫が必要なものがあるかどうかを検討した.(方法)便排出に関する症状を訴えた302例中Rome III criteriaでIBSと診断されたのは176例(女性119例)で,OO群は126例(女性97例)であった.IBSのsubgroupはIBS-C114例,IBS-D30例,IBS-M18例,IBS-U14例であった.全例に質問表による問診,排便造影,直腸肛門内圧検査を施行した.(結果)年齢はIBS群60.8±17.1歳,OO群54.9±16.0年とIBS群の年齢が高かった(P=0.0008).排便時間はIBS群8.7±6.4分,OO群7.6±5.2分とIBS群の方が長かった(P=0.016).残便感ありはIBS群84.0%,OO群88.1%と高かったが,両群に差はなかった.排便造影での造影剤排泄や下降状態,直腸重積・直腸瘤の出現に差はなかった.造影剤の漏れはIBS群では36.4%,OO群では25.4%とIBS群の方に漏れが多かった(P=0.04).直腸肛門内圧検査では便意発現量・圧に関して差はなかった.直腸感覚鋭敏率はIBS群36.9%,OO群36.5%と差はなかった.DyssynergiaもIBS群84.7%,OO群91.3%と高かったが,差はなかった.(結論)IBS群では便排出障害を訴える年齢が高く,排便時間が長い,排便造影での造影剤の漏れの率が高いという特徴があった.長期の強い怒責習慣が直腸肛門機能に障害を与え,便失禁の率を高くしている可能性が示唆された.さらに,IBSに合併する便排出障害ではIBSを合併しない便排出障害と同様にdyssynergiaの率が高いので早期に便排出障害を診断して,バイオフィードバック療法などで治療することが重要であると思われた.
索引用語