抄録 |
【目的】腹痛,下痢などの便通異常を訴える患者で,上部消化管内視鏡検査(EGD)と下部消化管内視鏡検査(CS),CTなどの検査で明らかな所見がない場合,機能性胃腸障害と診断されることが多い.この様な患者に対して,カプセル内視鏡検査(CE)を行い,小腸病変の有無と小腸通過時間について検討した.【対象と方法】2003年2月から2013年10月までに腹痛,下痢などの便通異常を認め,EGD,CSにて明らかな所見を認めずCEを施行した49症例(IBS群)(平均年齢44.8±16.5歳,男:女=35:14)を対象とした.比較する群として,同時期にCEを施行したクローン病患者37症例(CD群)(平均年齢33.6±13.8歳,男:女=32:5)と,対照の代用として原因不明消化管出血患者263症例(control群)(平均年齢63.3±16.2歳,男:女=176:87)とし,消化管通過時間やCE所見に対して,多重比較検定を用いて比較検討を行い,P<0.05にて有意差ありとした.【成績】消化管通過時間について,小腸通過時間は,control群5.35時間(h),CD群4.73h,IBS群4.60hであり,IBSとcontrol群間で有意差を認めた(P<0.05).食道,胃通過時間は,3群間に有意差を認めなかった.CE所見では,IBS群では発赤所見など小腸炎所見を認める症例が59.5%認めた.CD群では97.3%,control群では38.4%であり,各3群間に有意差を認めた(P<0.05).なお,文献的には健常成人の約10%に小腸炎所見を認めたと報告されている(Graham, D. Y., et al.:Clin Gastroenterol Hepatol, 2005).また絨毛萎縮の有無について,IBS群とcontrol群間で有意差を認めた(P<0.05).なお,IBS群での小腸炎所見は,CD症例,NSAIDs症例にみられる所見とは異なっていた.【結論】今回の検討では,機能性胃腸障害の患者は,小腸通過時間の短縮や小腸炎,絨毛萎縮の存在する可能性が示唆された. |