セッション情報 パネルディスカッション8

進行肝細胞癌の治療選択

タイトル PD8-4:

切除不能多発肝細胞癌に対する初回TACE後の治療選択

演者 安井 豊(武蔵野赤十字病院消化器科)
共同演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
抄録 【目的】肝予備能良好,脈管浸潤なしの切除不能多発肝細胞癌(HCC)における治療の第一選択はTACEであるが,再発後の治療選択は複数存在する.多発HCCに対するTACE導入後の治療選択により,予後の延長が得られるかどうかについて検討を行った.【方法】当院にてTACEを施行した1044例のうち,初回TACE時に多発・Child Aであった382例について,その後の治療選択と予後について検討を行った.【結果】382例のMSTは35.3カ月,PFSは6.3カ月であった.初回再発時もしくは2回目再発時にラジオ波焼灼術・肝切除の適応となった症例(downstage例)は111例(31.6%)であり,これらの症例は有意に予後が延長していた(MST 49.5カ月vs.28.9カ月,p<0.001).downstageに関与する因子として腫瘍径20mm以下(p=0.002)が有意であり,腫瘍マーカーは有意ではなかった.また,sorafenib導入適応外となるChild Bに悪化までの期間は中央値15.4カ月であり,早期にChild Bに悪化する因子として治療前アルブミン値(p=0.005),AFP値(p=0.02)が有意であった.経過中sorafenibに移行した症例は40例であり,移行までの期間は中央値10.6カ月であった.初回TACEからsorafenib導入までの期間によって導入後の予後に有意差は認めず,導入までのTACE間隔・TACE回数で予後に有意差は認めなかった.当院でのsorafenib導入134例のうち,肝切除に移行できた症例は5例でありsorafenib治療効果はPR 2例・新病変出現のない標的病変PD3例であった.【結語】多発肝細胞癌TACE例のうち,downstageが得られる例は再発時に積極的な治療選択により予後の延長が見込める.sorafenib導入例においては,PR例や長期に新出病変がない症例において肝切除の適応となる可能性がある.
索引用語