セッション情報 パネルディスカッション8

進行肝細胞癌の治療選択

タイトル PD8-8:

“治癒と長生き”を目指す門脈腫瘍浸潤症例に対する動注化学療法

演者 小尾 俊太郎(杏雲堂病院消化器・肝臓内科)
共同演者 佐藤 新平(杏雲堂病院消化器・肝臓内科), 河井 敏宏(杏雲堂病院消化器・肝臓内科)
抄録 【はじめに】動注化学療法は,Evidence levelも低く,煩雑な治療のため,標準的治療とはなり得ない.しかし切除不能進行肝細胞癌,特に門脈腫瘍浸潤症例に対して,“治癒と長生き”を目指せる唯一の治療法と思われる.
【目的】切除不能進行肝細胞癌,ことに門脈腫瘍浸潤症例における動注化学療法の成績をレトロスペクティブに解析して,どのような症例が“治癒と長生き”できるのか検討した.さらにPartial Responseとなった症例に対するConversion治療(切除)の達成率と予後についても検討した.
【方法】2000年から2012年までにインターフェロン併用5FU動注化学療法を施行した861例のうち,討議条件設定のため肝機能良好(Child-Pugh A)に限定(n=582)し,門脈腫瘍浸潤に焦点を絞り(n=419),さらに合併症(遠隔転移)を除いた367例を解析の対象とした.本治療は,自主臨床試験として当院の倫理委員会にて承認済みであり,個々の患者には書面と口頭により説明し承諾書を得た.動注カテーテルは,肝動脈に留置した.1コースは28日間として,Peg-IFN 90μgをday1,8,15,22に皮下注射した.5FUは500mg/dayを,day1-5,8-12に持続動注した.効果判定はRECISTに準じて各コース終了時に行った.
【成績】367例における生存中央値(MST)は8.7か月であった.治療効果は,CR53例(14%),PR87例(24%),SD93例(25%),PD134例(37%)であり,奏効率38%,腫瘍制御率63%であった.治療効果別のMSTは,CR 35.1か月,PR 13.0か月,SD 7.1か月,PD 4.5か月であった.予後予測因子は,HCV,AST,びまん型,腹水,Alb,AFP,血小板数であった.効果予測因子は,びまん型,AST,T.Bil,血小板数であった.Partial Responseとなった症例に対するConversion治療(切除)の達成率は,6/87例7%であったが,そのMSTは32.6カ月であり,CRの予後に匹敵した.
【結論】動注化学療法は,切除不能進行肝細胞癌,特に門脈腫瘍浸潤症例に対して,“治癒と長生き”を目指せる唯一の治療法である.
索引用語