セッション情報 パネルディスカッション8

進行肝細胞癌の治療選択

タイトル PD8-9:

Child A/B進行肝細胞癌に対する肝移植の意義

演者 海道 利実(京都大学肝胆膵移植外科学)
共同演者 小川 晃平(京都大学肝胆膵移植外科学), 上本 伸二(京都大学肝胆膵移植外科学)
抄録 【目的】肝細胞癌(以下肝癌)診療ガイドラインでは,肝移植の適応は肝障害度Cのミラノ基準内肝癌である.しかし実臨床では,肝予備能が良好な肝障害度A/Bの進行肝癌に対しても,種々の治療にて制御不能となれば肝移植が施行されている.そこで,肝障害度A/B(Child A/Bで代用)進行肝癌に対する肝移植の意義を検討した.
【方法】対象は,当科にて2012年8月までに肝癌に対し肝移植を施行した203例中,Child A/Bかつ高度進行肝癌(脈管浸潤は移植適応外のため,5cm以上または多発と定義)の82例.Child A27例,Child B55例.観察期間中央値は63ヶ月.Child A,B別に,1)全体生存率・再発率,2)Kyoto基準(5cm以下かつ10ヶ以下かつPIVKA-II400以下)内外生存率・再発率,3)前治療,4)前治療有無別生存率・再発率,5)前治療あり群におけるKyoto基準内外生存率・再発率,を検討した.
【結果】1)Child A:5年生存率・再発率は,各々61%,42%.Child B:5年生存率・再発率は,各々74%,18%.2)Child A:5年生存率は,Kyoto内88%,Kyoto外27%と,Kyoto内で有意に良好(p=0.006).5年再発率は,Kyoto内27%,Kyoto外66%と,Kyoto内で有意に低率(p=0.032).Child B:5年生存率は,Kyoto内90%,Kyoto外38%と,Kyoto内で有意に良好(p=0.001).5年再発率は,Kyoto内0%,Kyoto外60%と,Kyoto内で有意に低率(p<0.001).3)Child Aは全例前治療あり,Child Bは73%が前治療あり.ともにTACEと焼灼療法が最多.以下,前治療の有無で層別化可能なChild B症例のみ検討.4)前治療あり群は前治療なし群に比べ,生存率・再発率とも不良な傾向.5)前治療あり群の5年生存率は,Kyoto内93%,Kyoto外22%と,Kyoto内で有意に良好(p<0.001).5年再発率は,Kyoto内0%,Kyoto外80%と,Kyoto内で有意に低率(p<0.001).
【結語】腫瘍の悪性度を考慮したKyoto基準内であれば,集学的治療後のChild A/B進行肝癌でも肝移植成績は良好である.
索引用語