セッション情報 |
パネルディスカッション8
進行肝細胞癌の治療選択
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タイトル |
PD8-12:切除不能の大型進行肝細胞癌に対するダウンステージング後切除
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演者 |
奥田 康司(久留米大学外科学) |
共同演者 |
田中 正俊(ヨコクラ病院内科), 木下 寿文(久留米大学外科学) |
抄録 |
大型多発や大血管侵襲を伴う進行肝細胞癌(肝癌)は切除不能例が多く,治療成績も不良で治療法に関するコンセンサスは得られていない.欧米ではソラフェニブが標準治療となっているが,本邦においては動注療法や切除など,各施設の判断で行っているのが現状である.当施設では,根治切除不能肝癌に対してTACE/HAIを行い奏功した例に対して積極的に切除(ダウンステージング後切除;DS-Hx)を行ってきた.第7版UICC Stage III肝癌(径5cm以上多発,あるいは大血管浸潤例)に対してのDS-Hxの成績を紹介する.DS-Hxの基準は,当初は切除不能で,IVR治療で腫瘍が縮小,新病変を認めず根治的切除が可能となったものとし,UICC Stage III症例では2000年以降24例に行った.DS-Hxができた例はStage III症例で約20%.導入治療前平均腫瘍径は80mmで,Vp3,4を10例,Vv2,3を5例に認めた.全例Child-Pugh Aの肝機能良好例であった.導入治療法として,HAI 13例,TACE 4例,TACE+HAI 5例,TACE+radiation 1例,HAI+sorafenib 1例が施行されていた.1,3,5年生存率は95,72,61%,MST 115か月で,5年無再発率は39.4%と病態に比し良好であった.同期間に当初より根治的切除可能として行われたUICC Stage III切除症例(初回治療切除)は58例で,1,3,5年生存率は68,29,16%,MST 24か月で,DS-Hx例に比し不良であった.DS-Hx例と初回治療切除例の摘出標本では,前者が主腫瘍周囲の組織学的肝内転移や門脈浸潤が軽度であることが判明し,導入治療による悪性度軽減の効果が示唆された.UICC Stage III症例のIVR単独あるいは切除単独治療例の5年生存率は10~20%前後と報告されているが,今回,DS-Hx例は61%と非常に良好であった.Stage III症例の初回治療は未だ議論されるところであるが,少なくとも初回治療で奏功した例においてはDS-Hxを積極的に考慮すべきであり,またDS-Hxを目標とした初回治療選択が望ましいと考える. |
索引用語 |
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