セッション情報 パネルディスカッション8

進行肝細胞癌の治療選択

タイトル PD8-13:

肝切除を主軸とした肝癌集学的治療戦略

演者 波多野 悦朗(京都大学肝胆膵・移植外科)
共同演者 小島 秀信(京都大学肝胆膵・移植外科), 上本 伸二(京都大学肝胆膵・移植外科)
抄録 【背景】肝切除以外の治療を選択する場合の条件は,1 肝切除耐術不能もしくは 2 適応外の高度進行例である.相対的な適応として 3 肝切除と同等以上の予後が期待できる治療であること 4 肝切除を施行しても予後不良が予想される場合である.脈管侵襲を伴う肝細胞癌(HCC)において,肝癌治療アルゴリズムでは「Vp3-4では肝動注もしくはsorafenib,Vp1-2では肝切除やTACEも適応である」とされているが,切除=complete response(CR)といえる肝切除は非常にインパクトのある治療法である.【方法と成績】2001-2010年で肝切除を施行したVp3-4 HCC 66例全症例の生存期間中央値(MST)は21.3Mで,術後肝動注の有効性を明らかにするために,肝外転移を伴う12例,解剖学的理由からカテーテル留置不能3例,肝癌破裂2例,術後在院死2例を除いた47例を肝動注施行群24例と非施行群23例に分けて検討した.DFS中央値は施行群14.1M,非施行群7.1M(p=0.038),MSTは施行群43.1M,非施行群25.2M(p=0.034)で有意に施行群が良好であった.多変量解析にて,無再発生存に寄与する因子は単発,断端陰性,肝動注施行で,全生存に寄与する因子は肝動注施行のみが有意であった.一方,切除不能Vp3-4,Vv3HCC症例をFP肝動注群とIFN/5FU肝動注群に無作為に割付し,OSを評価した.全体のMSTは10.2Mであったが,5例(17%)で肝動注が奏効し肉眼的治癒切除が可能となり,良好な予後を得た(27,65,67,70,102M).【結論】Vp3-4 HCCにおいて,肉眼的治癒切除が安全に施行され術後早期より肝動注が施行できれば良好な予後が期待できる.切除不能例でも肝動注により切除可能となる症例があり,その予後は良好である.今後,肝動注プラスsorafenibにより奏効率が向上すれば,さらにconversionできる症例の増加が期待される.進行HCCといえども常に肝切除の可能性を追求する「肝切除を主軸とした肝癌集学的治療戦略」を確立する必要がある.
索引用語