抄録 |
緒言:食道胃静脈瘤は主に内視鏡治療またはIVR治療が施行されている.治療適応基準は概ねコンセンサスが得られているが,治療法は各施設ごとに様々な工夫がなされている.当院における食道胃静脈瘤治療の実状を,I:治療前準備(適応,血行動態把握法),II:治療法(鎮静,術中管理,手技,治療間隔),III:治療成績(累積非出血再発率等),IV:工夫・予防の各項目に分けて提示する.治療前準備:内視鏡的硬化療法を基本としているがHCC合併(VP3-4)例や腎機能障害例ではEVLを選択する.治療適応は静脈瘤形態がF2-3,RC1以上,急速な増大傾向症例である.治療前に患者の病態(肝予備能,HCC有無,合併症など),およびMD-CT,EUSにより門脈血行動態を把握する.治療内視鏡の内容・難易度により術者を事前に選定する.治療法:食道静脈瘤はEO・AS併用法及びAPC地固め法,胃静脈瘤はCA・EO併用法を基本としている.鎮静はミダゾラム,ペンタゾシンを使用し,治療中は血圧,脈拍,酸素濃度をモニタリングし,専属看護師が術中経過を記録する.治療間隔は週1回の間隔で施行する.治療成績:累積非出血再発率は食道:3年86.2%,5年84.0%,胃:3年91.0%,5年83.1%である.工夫・予防:i食道壁外シャント例:EUSによるシャント径やEVIS所見に合わせ,EO時間差注入法,無水エタノール法,選択的EVLを施行する.硬化剤流出が疑われた際は,ハプトグロビンの使用やhydrationで対応する.ii穿刺困難例:F0再発静脈瘤や蠕動が強い例には,内視鏡先端にcapを装着し穿刺する.iii巨大血腫予防:十分な供血路塞栓,小血腫形成時の早期ドレナージが有用である.iv食道狭窄:ASはon varicesに施行し,地固めはAPCにて行う.潰瘍形成部位へのASを避ける.v組織接着剤(CA)の大循環流出・肺塞栓予防:術前EUSによる静脈瘤径により適切なCA濃度を選択する.静脈瘤径φ12mm以上ではCA法の限界であり,IVRを応用したGR shunt閉塞下CA法で対処する.結語:安全かつ効果的な治療を行うために,病態の十分な把握と合併症の防止策を講じて手技に望むことが肝要である. |