セッション情報 パネルディスカッション9

食道胃静脈瘤治療の最前線

タイトル PD9-3:

当科における食道胃静脈瘤治療例の検討

演者 北村 和哉(金沢大学消化器内科)
共同演者 加賀谷 尚史(金沢大学消化器内科), 金子 周一(金沢大学消化器内科)
抄録 【背景】当科での食道胃静脈瘤治療は,内視鏡的硬化療法(EIS)を基本に,肝予備能高度低下例,進行肝癌例,EIS困難例に対しては内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を施行している.また最近ではEUSにてEIS困難例の選別を行うとともに,EIS,EVLともにアルゴンプラズマ凝固法(APC)による地固めを最終治療としている.今回当科における10年間の静脈瘤治療の成績および再発に関与する因子について検討を行った.【方法】2003年1月より2012年12月までの期間に,当科で初回の食道胃静脈瘤治療を施行された235例中,内視鏡的治療を施行し経過観察が行われた179例を対象とした(男性112例,女性67例,平均年齢63.9歳).静脈瘤破裂または再治療をエンドポイントとし,患者背景や治療法に関し,カプランマイヤー法(ログランク検定)およびCOX比例ハザード法にて比較検討した.【結果】対象179例中,初回治療はEIS 113例,EVL 66例であり,緊急40例,待機139例であった.背景肝疾患はHCV 94例,HBV 30例,アルコール26例,PBC 12例,その他18例であり,肝予備能はChild-Pugh A 87例,B 74例,C 18例であった.肝細胞癌の合併は71例に認めた.平均観察期間2.1年で60例(33.5%)に再発を認めた.再発に寄与する因子として,単変量解析では再発例で,初回治療時年齢が低い(p=0.015),男性(p=0.0006),APC地固めなし(p=0.013)が有意差を認め,また初回治療時のChild-Pugh scoreが低い傾向を認めた(p=0.090).この4項目で多変量解析を行ったところ,女性,APC地固めあり,初回治療時のChild-Pugh score値で再発率に有意差を認め(各p=0.013,0.015,0.032),それぞれのハザード比は0.35,0.28,0.82であった.【結語】今回の検討ではAPCによる地固め療法を施行した症例で有意に静脈瘤の再発率が低かった.食道胃静脈瘤再発予防には,初回治療法に関わらずAPC地固め療法まで施行することが重要と考えられた.
索引用語