セッション情報 パネルディスカッション9

食道胃静脈瘤治療の最前線

タイトル PD9-5:

食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法の効果と課題

演者 近藤 孝行(千葉大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 丸山 紀史(千葉大学医学部附属病院消化器内科), 横須賀 收(千葉大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【目的】食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(EIS)の短期・長期成績を検討し,その効果と課題を考察した.【方法】未治療の食道静脈瘤72例(2008年10月~2013年3月,IRB承認試験;肝硬変54,他18;出血34,予防38)を対象とした.EISについては,既報の通り装着バルンを併用してX線透視下で5%EOIを左胃静脈上流側まで注入した.静脈瘤の血栓化(EUS)を得るまでEISを繰り返し,アルゴンプラズマ凝固療法(APC)を付加した.【成績】1.抗静脈瘤効果:EISは平均1.65±0.81回(5%EOI 12.9±7.4ml/例),APCは平均1.7±0.4回で,全例で静脈瘤の消失を得た.観察期間の中央値は385日(52-1754)で,累積再発率は20.6%/1年,3例で再出血を認めた.また治療後には高度PHG例を有意に多く認めたが,胃静脈瘤には有意な変化を認めなかった.治療前後で,再発抑制因子として知られる食道壁外血行の分布(EUS;前62.9±6.1 mm2,後54.5±6.1 mm2)やHVPG(前224.1±55.1 mmH2O,後225.6±48.3 mmH2O),門脈本幹流量(超音波ドプラml/min;前791.6±365.9,後794.3±371)に有意な変化を認めなかった.2.再発予測因子:単変量解析では治療終了時の胃噴門部粘膜下層血管面積11 mm2以上(HR,7.016;95%CI,2.333-22.045;P=0.001),BMI24.5以上(HR,4.941;95%CI,1.593-15.329;P=0.006),治療前左胃静脈165 ml/min以上(HR,3.180;95%CI,1.024-9.868;P=0.045)が有意な再発予測因子であった.さらに多変量解析では噴門部血管面積が独立した再発予測因子であった(HR,5.096;95%CI,1.498-17.331;P=0.009).なお,治療後噴門部血管高度例(>11 mm2)では,治療前に既に噴門部血管の発達を認めており(軽度例:35.8 mm2,高度例:66.8 mm2),再発高リスク群として注意すべきである.【結語】APCを併用したEISは門脈血行動態への負担が低く,高い抗静脈瘤効果を認め静脈瘤治療の軸として位置づけられる.胃噴門部粘膜下層における残存血管は再発と強く関連していることから,その効果的塞栓が重要な治療戦略となる.
索引用語