セッション情報 |
パネルディスカッション9
食道胃静脈瘤治療の最前線
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タイトル |
PD9-8:血行動態に基づいたEVLでの食道・胃噴門部静脈瘤治療の長期成績
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演者 |
荒木 寛司(岐阜大学医学部消化器病態学) |
共同演者 |
井深 貴士(岐阜大学医学部消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大学医学部消化器病態学) |
抄録 |
【目的】EVLは多くの施設で食道静脈瘤治療として選択されている.安易なEVLでの不完全な治療は早期の再発や再出血を招き患者に不利益をもたらす.当科では巨木型を含む食道静脈瘤および噴門部胃静脈瘤(Lg-c)に対しEVL+APC地固め療法を標準治療としている.造影CTでの門脈血行動態,細径EUSでの治療後の食道周囲血管群の評価に基づく当科での食道・胃噴門部静脈瘤診療の現況と工夫,治療成績を提示する.【方法】静脈瘤治療前には造影CTにより門脈側副血行路を解析する.門脈因子陽性例には腫瘍栓,血栓に対する治療を併用する.EVLは密集法で施行し,噴門部静脈瘤に反転操作も併用しEVLで加療した.APC地固めを追加した.治療後にEUSでの食道噴門壁内血管,peri-ECVs,para-ECVs,貫通血管の評価を必須としている.貫通血管を有する例では特に短期での経過観察を行う.適切な経過観察の間隔を決定し適切に再治療を行う.1999年6月から2010年10月までに当科にてEVLで加療した連続症例の食道静脈瘤症例の421例(予防例80%,出血例20%).Lg-cは32%に合併し,F3(巨木型)が3%であった.2%の症例にはEIS(NBCA),Hassab手術を併用した.【成績】EVLでの長期成績は,累積非出血率は3年92%,5年86%,10年86%で出血予防が可能あった.累積再治療率は3年45%,5年60%,10年68%,累積生存率は3年50%,5年33%,10年12%であった.Lg-c合併例で累積非再治療率は3年64%,5年56%で,Lg-c非合併例の58%,43%と有意差を認めなかった.難治例は治療後6カ月以内の出血例を7例(1.7%),6カ月以内の再治療例を20例(4.8%)に認めた.難治例の臨床的背景ではVp4症例を19%に,ChildC症例を37%に認め,病因ではアルコール性肝硬変が30%を占め,IPH,糖原病,Wilson病など特殊な病因の症例も認めた.【結論】多くの食道静脈瘤・噴門部胃静脈瘤は術前術後に血行動態の評価を厳密に行うことによりEVLで治療可能であるが,難治例が存在しそれらには門脈因子の治療を含む集学的な治療を要する. |
索引用語 |
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