セッション情報 パネルディスカッション9

食道胃静脈瘤治療の最前線

タイトル PD9-9:

胃静脈瘤(Lg-f)に対する内視鏡的塞栓療法の基本手技と治療成績

演者 中村 真一(東京女子医科大学消化器病センター)
共同演者 岸野 真衣子(東京女子医科大学消化器病センター), 白鳥 敬子(東京女子医科大学消化器病センター)
抄録 【目的】胃静脈瘤(Lg-f)に対する治療として,cyanoacrylate系薬剤を用いた内視鏡的塞栓療法とバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)の有用性はコンセンサスが得られている.特にHistoacrylによる内視鏡的塞栓療法は出血例に対する止血法の第一選択となっている.2013年4月にHistoacrylが胃静脈瘤の内視鏡的血管塞栓材料として承認され,今後,実施される機会が増加すると予想される.今回,Histoacrylを用いた内視鏡的塞栓療法の基本手技と治療成績を報告する.【対象と方法】1994年7月から2013年10月に胃静脈瘤(Lg-f)に対して,Histoacrylによる内視鏡的塞栓療法を行った66例を対象とした.男性41例,女性25例,平均年齢62.7歳で,治療適応は出血47例,予防19例で,基礎肝疾患はウィルス性50例,アルコール性11例,その他5例で,肝予備能はChild-Pugh分類A19例,B35例,C12例で,肝癌合併29例(43.9%)であった.治療後の累積非出血率,生存率を検討した.なお,治療手技は住友ベークライト社製23G5mm穿刺針を使用し,Histoacryl 0.5ml+Lipiodol 0.3ml(濃度62.5%)の混合液を用いた.緊急例を除き,X線透視下で穿刺,局注し,静脈瘤および供血路,排血路が鋳型状に塞栓されたことを確認した.【結果】治療回数は平均1.4回,Histoacryl使用量は平均1.7ml(穿刺回数3~4回)であった.観察期間は中央値33.0ヶ月で,累積非出血率は2年79.3%,5年73.7%で,生存率は2年78.2%,5年61.9%であった(Kaplan-Meier法).死亡例31例の死因は肝不全17例,肝癌9例,消化管出血2例,その他3例であった.【結論】Histoacrylによる内視鏡的塞栓療法は胃静脈瘤に対する有効な治療法である.胃静脈瘤治療は食道静脈瘤に比し専門性が高く,本法も難易度が高く,現時点では静脈瘤治療に熟達した医師が行うべきである.今後,安全な治療法として確立,普及するためには,後輩医師やコメディカルの教育も重要である.
索引用語