セッション情報 パネルディスカッション9

食道胃静脈瘤治療の最前線

タイトル PD9-12:

バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術におけるリアルタイムシミュレーションと治療成績の検討

演者 富川 盛雅(福岡市民病院外科)
共同演者 赤星 朋比古(九州大学大学院先端医療医学), 橋爪 誠(九州大学大学院先端医療医学)
抄録 【はじめに】バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:BRTO)は静脈系解剖の個体差が大きく治療に難渋する症例も見られる.治療にあたっては詳細な血管構築の把握が重要であるが,われわれはmultidetector-row computed tomography(MDCT)などの医用画像を応用した新たな工夫を加え,治療成績の向上を目指している.【方法】2004年から2013年までに,肝性脳症に対しBRTOを施行した32例を対象とした.術前MDCTデータを門脈血行動態の診断に供するとともに,管腔臓器の自動診断を目的として開発されたコンピューター診断支援システムNewVESを用いて静脈のフライスルー軌跡解析を行い,その結果を治療時のリアルタイムシミュレーション画像として応用した.【結果】男性18例,女性14例,平均年齢64歳,Child-Pugh分類(A/B/C,1/21/10),肝性脳症昏睡度(I/II/III/IV,19/7/6/0)であった.主な短絡路は胃-腎短絡路13例,脾-腎短絡路10例,その他9例であり,単一短絡路20例,複数短絡路12例であった.血行動態が極度に複雑な症例ではフライスルー軌跡解析は困難であったが,リアルタイムシミュレーション画像を参照することにより従来にくらべ治療時間が短くなる傾向にあった.術後3カ月目までは肝機能や肝性脳症昏睡度が全例で改善した.7例で1年以内の肝性脳症の再発を認め,追加治療が必要であった.再発した症例は再発しなかった症例にくらべ,複数の短絡路を有する症例が有意に多く,また治療前の門脈圧(HVPGにて測定)が有意に高かった.【結論】NewVESを応用した新たなシミュレーションはBRTOにおいて有用である可能性が示唆された.BRTOは門脈大循環短絡に起因する肝性脳症に対し有効な治療法であることが示唆されたが,複数の短絡路を有する症例では肝性脳症の再発率は高く,MDCTなどの低侵襲的診断法に新たな工夫を加え治療戦略を立てる必要がある.
索引用語