セッション情報 パネルディスカッション9

食道胃静脈瘤治療の最前線

タイトル PD9-15:

静脈瘤治療の現状

演者 佐藤 隆啓(札幌厚生病院消化器科)
共同演者 山崎 克(札幌厚生病院消化器科), 木村 睦海(札幌厚生病院消化器科)
抄録 (はじめに)食道・胃静脈瘤以外の異所性静脈瘤は稀であるが,時に大量出血をきたし生命にかかわることがある.しかし,門脈圧亢進症に伴う異所性静脈瘤の頻度や患者背景に関して詳細な報告は少ない.異所性静脈の患者背景について検討した.(対象)1994年以降,これまで1500を越える食道・胃静脈瘤に対し内視鏡あるいはinterventional radiology(IVR)による治療を行ってきたが,食道・胃静脈瘤に対する治療法はほぼ確立されたといえる.この期間で異所性静脈瘤と診断し治療を行ったのは77例である.尚,最近10ヶ月間で緊急・待機治療を行った静脈瘤症例は45例あったが,食道・胃静脈瘤出血は29例であったのに対し,異所性静脈瘤出血は16例(胃体部静脈瘤3例を含む)と高頻度であった.(結果)異所性静脈瘤77例の内訳は直腸静脈瘤58例,十二指腸静脈瘤9例,小腸静脈瘤4例,膀胱静脈瘤2例,Stoma静脈瘤1例,結腸静脈瘤3例で基礎疾患は肝硬変46例,肝癌合併肝硬変12例,特発性門脈圧亢進症7例,原発性胆汁性肝硬変6例,肝外門脈閉塞症5例,その他1例であった.このうち食道静脈瘤治療既往があったのは73例中77例(94.8%)で,治療既往のない症例でも全例に食道静脈瘤を並存しており,食道静脈瘤治療既往と異所性静脈瘤発症の強い相関が示唆された.過去に静脈瘤治療を行なった1530例中73例(4.8%)の頻度であった.異所性静脈瘤出血例は内視鏡あるいはIVR治療により,全身状態の悪かった1例を除き,全例で出血コントロールが可能であった.直腸静脈瘤に関しては一部,予防的に治療を行った症例もあるが予後は良好であった.(結論)門脈圧亢進症患者の予後延長に伴い,異所性静脈瘤の頻度が増加する可能性は高く,その対策は重要である.
索引用語