抄録 |
(はじめに)自己免疫性膵炎(Autoimmune pancreatitis:AIP)は,疫学,病態,治療法など,その実態についてはいまだ不明な点が多い.過去2回,厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班により,全国疫学調査が行われた.その後,AIPの国際コンセンサス診断基準(International Consensus Diagnostic Criteria,ICDC)が制定され,さらに,ICDCに基づいて2011年に日本のAIP臨床診断基準(診断基準2011)が改訂された.今回,診断基準2011に基づいて,厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の調査研究活動として,第3回全国疫学調査を行った.(方法)全国の内科(消化器内科),外科(消化器外科)を標榜する診療科および救急救命センターから層化無作為抽出法により4,175診療科・センターを抽出した.調査は郵送法により行い,2011年の1年間に受診した新規および継続療養症例の男女別患者数について調査した.その後,一次調査でAIP患者ありと回答した施設に,二次調査票を送付した.(結果)1,884診療科・センターより回答を得た(回答率45.1%).男性1,462例,女性497例(男女比:2.9:1)が集計された.このうち新規罹患症例は544例(男性385例,女性159例),継続療養症例は1,415例(男性1077例,女性164例)であった.各階層の回答率,抽出率から推計した年間受療者数は5,745人(95%信頼区間:5,325-6,164人),年間罹患患者は1,801人(95%信頼区間:1,597-2,018人)であった.有病率は人口10万人あたり4.6人(成人人口10万人あたり5.5人),罹患率は人口10万人あたり1.4人(成人人口10万人あたり1.7人)と推計された.自己免疫性膵炎の推計年間受療者は第2回調査より2.1倍に増加していた.現在,二次調査を行い,集計中である.(まとめ)第3回AIP全国調査では,AIP症例が大きく増加していた.その要因としてAIP診断基準の改訂と,疾患概念の普及が考えられた.二次調査の結果と合わせ,報告する. |