セッション情報 パネルディスカッション10

AIP―概念,診断,治療のUpdate―

タイトル PD10-4[追]:

1型自己免疫性膵炎診断における生検の有用性―全身8臓器からの生検組織での比較検討―

演者 内藤 格(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
共同演者 山下 宏章(名古屋市立大学消化器・代謝内科学), 中沢 貴宏(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】1型自己免疫性膵炎(AIP)は全身性のIgG4関連疾患(IgG4-RD)であり,全身諸臓器からの生検診断が報告されているがその診断能は様々である.またIgG4-RDの病理診断基準では強拡大(HPF)3視野でのIgG4陽性細胞数,IgG4/IgG陽性細胞比が必要とされているが,生検による診断は困難であることが多い.今回我々はAIP8臓器からの生検診断能および診断方法につき検討を行った.【方法】IgG4測定が可能であったAIP36例を対象として,膵臓19例,胃28例,十二指腸27例,Vater乳頭25例,大腸19例,肝臓11例,胆管24例,小唾液腺13例から生検を行い,コントロールとの比較検討を行った.診断基準は(a)IgG4陽性形質細胞>10個/HPF,(b)IgG4/IgG陽性形質細胞比>40%とし,(A法)1HPFでa,(B法)1HPFでaかつb,(C法)3HPF平均でa,(D法)3HPF平均でaかつb,の4診断方法での診断能についても比較検討を行った.【成績】1)IgG4陽性形質細胞数/HPF:Vater乳頭が平均8.8個/HPFと8臓器の中で最多であり,コントロールより有意に多数であった(p=0.012).2)診断能(A法):感度はVater乳頭が52%(13/52),特異度は膵臓,胃,十二指腸,肝臓,胆管,小唾液腺が100%,正診率はVater乳頭が73%と最も高率であった.3)診断方法(A:B:C:D法):Vater乳頭の感度は52%:40%:20%:16%,特異度は90%:94%:90%:94%,正診率は73%:70%:59%:59%であり,Vater乳頭の感度,正診率はA法による診断方法が最も高率であった.4)血中IgG4値,組織中IgG4陽性形質細胞数/HPFの相関:肝臓で中程度の相関(p=0.035,r=0.638),胃で弱い相関(p=0.037,r=0.397)を認めた.5)臨床像:Vater乳頭陽性症例(A法)は膵頭部腫大(p=0.005)と乳頭腫大(p=0.041)を高頻度に認め,IgG4関連硬化性胆管炎を高率に合併した(p=0.030).血中IgG4値との関連は認めなかった.【結論】IgG4陽性形質細胞>10個/1HPFの診断基準を用いたVater乳頭からの生検は1型AIPの補助診断として有用であると考えられた.
索引用語