セッション情報 |
パネルディスカッション10
AIP―概念,診断,治療のUpdate―
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タイトル |
PD10-10[追]:無黄疸の自己免疫性膵炎に対するステロイド治療導入の妥当性に関する検討
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演者 |
平野 賢二(東京大学消化器内科) |
共同演者 |
多田 稔(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科) |
抄録 |
【背景と目的】自己免疫性(AIP)診療ガイドラインによれば,ステロイド治療の適応は原則として有症状例とされているが,無症状なら治療しなくてよいというエビデンスは乏しいものと思われる.AIPの臨床症状の中で最も多くかつ問題になるのは閉塞性黄疸であり,今回の検討では無黄疸症例において診断と同時にステロイド治療を開始した群と経過観察された群の再燃率を比較することで,無黄疸例の経過観察が妥当か否かを明らかにすることを目的とした.【対象と方法】2012年までに当院ないし関連病院でAIPと診断され,かつAIP発症時に黄疸を認めなかった60例(平均発症年齢67歳,男:女=45:15)を対象とした.ステロイド治療が診断と同時に施行された39例(治療群)と無治療で3カ月以上の経過観察がなされた21例(経過観察群)の2群にわけ,経過中の膵ないし膵外病変の再燃率を比較した.【結果】両群で性別(男30女9 vs男15女6,P=0.81),AIP発症年齢(67 vs 66歳,P=0.88),IgG(2065 vs 1937 mg/dl,P=0.51),IgG4(691 vs 500 mg/dl,P=0.12),腹痛有無(腹痛ありが13 vs 4例,P=0.37)の比較を行ったがいずれも有意差は認められなかった.治療群での再燃は4例であり,全例膵病変による再燃であった.経過観察群での再燃は12例であり,内訳は膵病変増悪5例,後腹膜線維症3例,硬化性胆管炎,間質性腎炎,間質性肺炎,腸管膜偽腫瘍,冠動脈病変が各1例であった.各群の1,3,5年累積再燃率は治療群で3%,13%,13%,経過観察群では15%,47%,53%であり,ログランク検定ではP=0.0006で経過観察群において有意に再燃率が高いという結果であった.【結論】無黄疸例におけるステロイド治療は患者にとってはすぐに効果を実感できるものではなく,最終的な治療適応は患者の年齢や全身状態を考慮して決められるべきである.しかしながら,再燃率の観点からは経過観察群の再燃率は治療群より明らかに不良であり,無黄疸例においてもステロイド治療導入は妥当と考えられる. |
索引用語 |
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