セッション情報 パネルディスカッション10

AIP―概念,診断,治療のUpdate―

タイトル PD10-11:

自己免疫性膵炎におけるステロイド長期投与量と再燃について

演者 田原 純子(東京女子医科大学消化器内科)
共同演者 清水 京子(東京女子医科大学消化器内科), 白鳥 敬子(東京女子医科大学消化器内科)
抄録 【背景】自己免疫性膵炎(AIP)はステロイド(PSL)治療が奏功するが,PSLの減量や中止による再燃例が認められ,PSL中止に対する明確な指標がない一方,PSLの長期投与による合併症が懸念されている.【目的】2000年4月から2013年7月までにI型AIPと診断しPSL投与を行った36例について,再燃の有無,総PSL投与量と投与期間,将来的に予測されるPSL投与量について検討を行った.【方法】初回投与PSLは30mg/日から開始し2-4週間ごとに減量を行った.再燃前のPSL投与量は,2.5mg未満4例,2.5~5mg 5例,5~7.5mg 2例であり,再燃時にはPSL20~30mg/日に増量した.初回投与から再燃前のPSL総投与量,再燃後から現在までのPSL総投与量,PSL維持量を継続投与した場合の10年間の予測総投与量について検討した.【結果】36例の内訳は,AIP再燃群13例,非再燃群23例であり,男女比は再燃群11:2,非再燃群13:10,平均年齢は両者ともに67歳であった.AIP再燃群における初回投与から再燃前のPSL総投与量は平均3938mg(1062~5172mg),再燃後から現在までのPSL総投与量は平均5768mg(3240~8491mg),総投与量は平均9705mg(4309~14679mg)であった.非再燃群におけるPSL総投与量は平均5220mg(2040~15902mg)であった.PSL平均投与期間は再燃群で1362日(初回投与期間492日,再燃後投与期間870日),非再燃群で1006日であった.再燃例について,最低維持投与量から概算した10年間のPSL予測総投与量は平均で17273mgであった.【考察】再燃群では非再燃群より投与期間や総PSL投与量が多く,再燃例では初回投与に比べ,再投与の投与期間や投与量が多かった.PSL総投与量が1g以上で副腎不全のリスクが出現し,安全使用域の投与量も明確になっていないため,AIPでの長期PSL投与は慎重に行う必要があると考えられた.【結語】AIP症例に対するPSL治療は有効であるが,再燃例での低用量の長期投与が必要な場合は免疫抑制剤などの併用によるPSLの減量を検討すべきである.
索引用語