セッション情報 パネルディスカッション10

AIP―概念,診断,治療のUpdate―

タイトル PD10-12[追]:

ステロイド治療が自己免疫性膵炎の予後に与える影響

演者 塩見 英之(神戸大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 増田 充弘(神戸大学医学部附属病院消化器内科), 久津見 弘(神戸大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 [背景・目的]自己免疫性膵炎のステロイド治療は短期的には高い奏功率が得られ,多くの施設で施行されている.ステロイド治療により膵内外分泌機能の改善が得られるとする報告がある一方で,ステロイド治療後に糖尿病が発生したとの報告もあり,ステロイド治療が自己免疫性膵炎の予後を改善するかどうかは一定の見解を得ていない.今回,膵萎縮の有無が予後に影響するかを検討した.[対象]2005年12月から2013年6月の間に当院で自己免疫性膵炎と診断した43例の内,ステロイド治療を行いその後の経過観察が可能であった31例を対象とした.膵癌との鑑別が困難で手術を施行した4例は対象から除外した.腹部CTにて膵体部の厚みが10mm以下のものを膵萎縮と定義し,ステロイド維持療法の時点で膵萎縮を来したものをA群,来さなかったものをB群とし2群の背景因子の比較を行った.全例がステロイド治療前には膵萎縮を来していなかった.[結果]ステロイド治療は全例で奏功した.A群は12例,B群は19例であった.A群をB群と比較し,平均年齢(65.8歳vs. 59.1歳,p=0.23),男女比(男/女:9/3 vs. 12/7,p=0.69),膵外病変の有無(12/12 vs. 16/19,p=0.26),限局型かびまん型か(限局型/びまん型:6/6 vs. 9/10,p=0.99),飲酒歴(6/12 vs. 9/19,P=0.99),治療前の石灰化の有無(2/12 vs. 2/17,p=0.63),治療前IgG4値(435.5 vs.784.6,p=0.12),維持療法時IgG4値(263.5 vs. 322.1,p=0.62)では有意差を認めなかった.しかしA群ではB群にくらべて糖尿病の悪化(9/12 vs. 2/17,p=0.001),糖尿病の新規発生(5/12 vs. 2/17,p=0,07)を有意に認めた.[考察・結語]自己免疫性膵炎に対するステロイド治療は短期的には良好な転機が期待できるが,長期的には通常型慢性膵炎に移行する例が存在する.ステロイド治療後に膵萎縮を来す例では,高率に膵内外分泌障害を伴っており,糖尿病の新規発生や増悪の可能性があるため,免疫調整薬などのステロイド治療以外の治療法を考慮する必要性が示唆された.
索引用語