抄録 |
IPMNの国際コンセンサスガイドラインが改訂されて2012年版として出版された.主膵管型IPMNを主膵管の5mm以上の拡張で拾い上げるようにしたり,分枝型IPMNを分枝の6mm以上の嚢胞状拡張とすることでより早期のIPMNを検討の対象にすることにした.分枝型IPMN例の悪性指標を二段階に分け,嚢胞径≧30 mm,5-9 mmの主膵管拡張,造影される壁肥厚,造影効果のない壁在結節,尾側に閉塞性膵炎を伴う主膵管狭窄,近傍のリンパ節腫大をworrisome features,閉塞性黄疸を伴う膵頭部の嚢胞性病変,CTまたはMRIで造影される充実性成分,10 mm以上の主膵管拡張をhigh-risk stigmataとした.worrisome featuresを示すものの精査手段としてEUSを指定したのも改訂版の特徴である.その結果で壁在結節があれば悪性の頻度が増すので切除の対象となり,これが無い場合は経過観察となる.これまでのIPMN切除例の予後を検討すると5mmまでの微小浸潤癌までなら5年生存率は100%と,それ以上の浸潤癌の約30%と比較して大きく異なることから,上皮内癌,微小浸潤癌の間に切除に踏み切る必要がある.これを見極める最適の診断法と,それを行う適切な経過観察の間隔はまだわかっていない.患者の年齢も考慮する必要があり,改訂版では65才未満の若い患者では2 cm以上の分枝型IPMNは累積悪性化リスクが高いために切除を考慮してもよいかも知れないとした.頻度は低いもののIPMN例に出現する通常型膵癌も観察・治療のタイミングと予後に大きく影響する.半年前の造影CTでは見えなかったのに肝転移とともに通常型膵癌が見つかった例もある.講演ではこれらの経験をもとに経過観察と治療のタイミングについて問題提起をし,続くパネルデイスカッションの議論につなげたい. |