セッション情報 パネルディスカッション11

IPMNの経過観察,治療のタイミングと予後

タイトル PD11-6:

分枝型IPMNの経過観察例からみた2012年国際診療ガイドラインの妥当性の検証

演者 鎌田 研(近畿大学医学部消化器内科)
共同演者 北野 雅之(近畿大学医学部消化器内科), 工藤 正俊(近畿大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】IPMNの経過観察における2012年国際診療ガイドラインの妥当性を評価する.【対象】2012年4月までに診断されたIPMN 572例のうち,1年以上の経過観察が可能であった分枝型IPMN180例を対象とした.男女比98:82,平均年齢64歳(33-88)である.【方法】初診時にUS,CT,MRIおよびEUSを施行し,これら4つの画像診断を用いて6ヵ月毎の経過観察を行った.経過観察中にIPMN病変の進展や併存膵癌の発生が疑われた場合は,上記4つの画像診断をすべて実施した.検討項目は1)経過観察開始時の臨床因子,2)IPMN病変の進展率,3)IPMN併存膵癌の発生率および臨床的特徴,4)壁在結節の出現・増大および併存膵癌の発生に対する各画像診断の検出能の比較,とした.【結果】1)嚢胞径3cm以上/未満:22/158,主膵管径6mm以上/未満:11/169,壁在結節あり/なし:24/156であった.2)観察期間中央値は54ヵ月.進展は19例(11%)にみられ,嚢胞径10mm以上の増大11例,結節の出現あるいは2mm以上の増大6例,嚢胞径+結節の増大2例であった.進展は,経過観察開始時にhigh-risk stigmataであった症例では13%,high-risk stigmata以外の症例では10%にみられ,両者間に有意な差は認められなかった.経過観察中にIPMN由来浸潤癌は認められなかった.3)IPMN併存膵癌が8例(4%)に発生した.平均年齢は68歳(59-72),平均腫瘍径は15mm(7-30),局在は頭部に1例,体尾部に7例であった.膵癌発生時の平均嚢胞径は13mm(10-18),主膵管径は4mm(2-5)であった.4)EUS,US,CTおよびMRIの壁在結節検出率はそれぞれ100%,13%,25%および25%であり,IPMN併存膵癌検出率はそれぞれ100%,13%,38%および38%であった.【結語】high-risk stigmataとそれ以外の症例の間で,IPMNの進展率に有意な差は認めなかった.一方,IPMN併存膵癌はworrisome featuresにも当てはまらない症例に合併しており,ガイドライン通りの経過観察法では進行癌に至るまで発見されないリスクがある.EUSはIPMN併存膵癌の早期発見に有用であると考えられる.
索引用語